言論封殺の暴挙許すな 主筆・社長 寒河江浩二

2015年06月30日 10:00

 自民党若手議員による勉強会で、安全保障関連法案をめぐり沖縄県の地方紙2紙の報道機関に圧力をかけ、言論を封じようとする動きがあったことは誠に遺憾であり、残念なことである。安倍政権に批判的な新聞社はつぶしてしまえ、マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい、など、まるで戦前の軍部のような横暴な意見があったという。

 事は、沖縄の地方紙2紙だけの問題ではない。言論の自由、報道の自由、そして新聞の独立という民主主義の根幹にかかわる問題なので、ここに緊急声明を出し、県民にその是非を問いたい。

 攻撃の対象となった沖縄タイムス社と琉球新報社は、一般社団法人日本新聞協会に加盟し、社団法人共同通信社の加盟社でもある。つまり、国内はもとより、国際的にも認められた立派な新聞社である。沖縄県内の読者をこの2紙でほぼ独占するほど信頼を得ている地方紙である。それだけに影響力も大きい。

 2紙のどんな内容の記事が問題になったのか、どんな社としての姿勢が問題になったのか、についての論議はここではしない。憲法で保障されている表現の自由、報道の自由があるわけで、だからこそ新聞は、新聞倫理綱領を制定して、自らを厳しく律している。そうした自己規制を日々行っている新聞社を、自分の意見にくみしないからつぶしてしまえ、収入の道を絶ってしまえ、というのではあまりにも暴論過ぎはしまいか。それも、将来の日本を背負う若手国会議員の勉強会で出た意見という。つつましく、控えめに、腹を立てずに我慢して、人様に迷惑をかけるな、としつけられた戦後の日本人の原点はどこに行ったのだろう。

 今年は戦後70年の節目に当たる。その間、我々は多くのことを学んできたはずである。日本人としての知恵と工夫、そして努力の結果、国際的にも先進国の高い評価を得てきたのである。こうした実績が、このところの政治の劣化というべきか、軽はずみな政治家の言動によって、ないがしろにされている気がしてしょうがないのである。今回の問題は、まさにその典型であろう。

 大政翼賛に走って、戦後大きな反省を余儀なくされた多くの新聞社がたどった道は決して無駄ではなかった。いつか来た道を、断じて再び歩んではならないことを、われわれに強烈に訴えてくるからである。国体が変わろうとしているのではなく、だれかが変えようとしている時は、眉につばして、よほど慎重に構えて事を運ばなければならない。その意味で、言論封殺の暴挙は決して許してはいけないのである。
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