「大学入学共通テスト」試行調査の分析

2017年12月5日

 「大学入学共通テスト」の試行調査では、国語と数学I・Aで本番を意識した記述式問題が出題された。入学段階で求められる思考力、表現力はどのように問われたのか。出題の狙いや課題について大手予備校が分析した。
試行調査の問題冊子など
国語
数学ⅠA
数学ⅡB
世界史B
日本史B
地理B
現代社会
物理
化学
生物
地学
自己採点用紙(国語)
自己採点用紙(数学ⅠA)
解答用紙
正解表
 【国語の記述式問題】
 学校の部活動の規則をテーマに、形式の異なる複数の文章や資料を読み比べて情報を整理し、記述させる内容。生活に即した実用的な文章に対する読解力を重視しているが、こうした形式の出題に慣れていない生徒は戸惑ったかもしれない。

 問題では、生徒会部活動委員会で取り上げる議題を打ち合わせる執行部メンバーの会話文、生徒会部活動規約をまとめた表、部活をテーマにした学校新聞など計5種類の文書が提示された。

 部の新設を申請する条件と手続きについて規約から要約させたほか、部活の終了時間を延長することの賛成点と問題点を、「しかし」など特定の言葉を用いて120字以内で書かせた。

 ただ、問題の難易度はそれほど高くない。文章や資料中のどこに何が書いてあるのかを理解した上で、設定された条件に沿ってまとめればよく、高度な表現力や構成力は求められていない。読解力と、要約して記述する力があれば解答を導き出せるだろう。(河合塾)

国語(第1問[会話文・資料・問1~3])
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国語(自己採点用紙[採点手順、問1~3])
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 【数学I・Aの記述式問題】
 難易度はそれほど高くない。ただ、受験生の思考過程を一定の分量を割いて書かせる国立大の2次試験問題とは異なり、出題者の意図に沿って一部を短く解答させる形式で、正答条件の制約が多い。理解しているのに誤答となる生徒がいるかもしれない。

 例えば、44道府県の観光客数と消費総額のグラフを基に、消費額単価の最も高い県を特定する方法を説明させた第2問では、「直線が原点を通る」と記述することを正答の条件にしている。だが、数式を使うなど別の説明でも正答となる可能性があり、解答の自由度が低い。

 また問題文自体が長く、内容を把握するのに時間がかかり、一般的な読解力の高校生は時間内に全てに手が回らなかったかもしれない。大学入学共通テストの狙いの一つである思考力を問うため、身近な事象を数式や記号に置き換える力を確かめたいのは理解できるが、数学の試験なのに「国語力」が多く問われた出題になっている。問題量や内容の調整が必要だろう。(駿台予備学校)

数学(第1問[1]の(1)と(4)、[2]の(5)と(6)、第2問[2](2))
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数学(自己採点用、第1問[1]の(1)と(4)、[2]の(5)と(6)、第2問[2](2)の解答)
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