2024年3月19日(火)
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ゼレンスキー大統領会見詳報

2023年5月21日

 ウクライナのゼレンスキー大統領が21日に行った記者会見での発言の詳報は次の通り。

【冒頭発言】

 親愛なる日本国民の皆さん。平和を大切にする世界の皆さん。私は(原爆の強烈な熱線で残った)「人影の石」となる危機に陥った国から来た。

 世界は戦争を行うべきではない。人類は長い歴史で、多くの命を戦争により失ってきた。人が人を死なせてきた。人類の歴史から戦争をなくさなければならない。

 今、ウクライナは破滅的な戦争の中心にある。わが国の領土に入った侵略者はウクライナ人を支配下に置くだけでなく、ウクライナ人そのものが存在しないと世界にうそをついている。ウクライナ人が勇敢でなければ、ロシアによるジェノサイド(大量虐殺)が成功していたかもしれない。ウクライナがあった所に人影の石だけが残っていたかもしれない。

 ウクライナ人は勇敢で、自由が好きな国民だ。敵がウクライナに使っている武器は核兵器ではないが、ロシアの爆弾や砲撃で全焼したウクライナの町は広島の街、とりわけ原爆資料館を訪れた時に見た写真に似ている。数万人がいた所に残るのは灰とがれきだ。

 今の広島は再建された。私たちはウクライナの再生を夢見ている。領土奪還が夢だ。「(ウクライナの)北方領土」を奪還したのと同様、東と南の領土も奪還したい。

 ロシアで捕虜となった軍人や民間人、強制移住させられた大人と拉致された子どもを帰還させたい。勝利と、その後の平和が夢だ。

 ここ広島では、ウクライナ(支援)で結束するよう呼びかけるメッセージが重要だ。

 ロシアは文明的なものを全て破壊した。1年前からわが国にある欧州最大の原発が占拠されている。ロシアはテロ国家だ。原発の敷地を武器倉庫にしたのはロシアだけであり、原発を盾にしてウクライナの町を攻撃するのもロシアだ。こうした恐ろしい犯罪を無視することはできない。ウクライナは1986年にチェルノブイリ原発事故を経験した。

 ロシアの悪と愚かさに対処しない限り、世界が廃虚になる。占拠された原発をウクライナと国際原子力機関(IAEA)の管理下に置かなければならない。

 ロシアが世界最後の侵略国になるように、この戦争が終わり、世界平和が続くために結束しよう。私たちは文化や価値観、国旗が違う。しかし、自分たちのため、子どものため、孫のために平和と安全を求めている点は同じだ。人影の石が資料館でしか見ることができなくなるように、国境が認められるように世界の人々がやれることを全てやるべきだ。

 広島では今、街角にウクライナ国旗の色が見える。これはウクライナへの信頼の表れだ。日本の皆さん、岸田文雄首相、ありがとう。戦争の犠牲になった全ての人が安らかに眠れるように。平和になるように。ウクライナに栄光あれ。

【質疑応答】

  (ウクライナの激戦地)バフムトでの戦闘は続いているのか。

  バフムトについて作戦的なことはここで共有できないが、もうすぐウクライナが勝利する。一番恐ろしいのが(敵に)包囲されることだ。包囲を許さず、捕虜にされないようにすることが重要。ウクライナ軍がいるが、包囲されていない。

  F16戦闘機の引き渡しは可能になったのか。

  いつ供与されるか言えないが、その加速のために努力したい。

  カナダの支援に満足はしているか。

  カナダとは強力な協力関係ができている。例えば地雷除去のシステム提供について、大きな協力を得ている。ロシアは普通の敵ではなく、テロリストだ。ウクライナの地に地雷を埋設している。

  ブラジルのルラ大統領と会っていないのはなぜか。

  ほとんどのリーダーと面談した。それぞれのスケジュールがタイトで、ブラジル大統領と会うことができなかった。

  会えずに失望しているか。

  先方が失望しているのではないか。

  原爆資料館で印象に残ったものは。

  広島の写真はバフムトに似ている。どこに建物があったか想像できない。完全な破壊。人も誰もいない。(広島は)今、平和になっている。バフムトでも将来必ず、広島のような復興がある。広島の街に似ているのが今の(ウクライナ東部)ドンバスの光景だ。

  帰国して伝えたいことは。

  大変恐ろしい写真がたくさんあった。小さな子どもたちを見ると涙が出る。ウクライナでも毎日このような写真を見る。どうして人間が、特に子どもたちにこんな恐ろしいことができるのか、理解できない。

  主要国(G7)から兵器の供与を取り付けたか。

  具体的には言えない。

  オーストラリアなどとは何を話したか。

  オーストラリアとは作業を始めている。ロシアのプロパガンダに対抗し、ウクライナの立場が理解されるよう努力する。

  電撃訪問で、核軍縮から注意がそがれたとの指摘がある。

  招待を受けての訪問だ。オンライン参加の可能性も高かった。セキュリティー上の制約があり、発表できなかった。

  外交圧力がロシアに対して成果を上げていない。日本や韓国に殺傷能力のある兵器の供与を求めるか。

  ロシアに対する外交圧力、戦争終結のための解決方法については国連憲章、国際法の順守が重要だ。ウクライナの領土や一体性を侵害し、侵略しているロシア軍にまず撤退してもらわなければならない。

 (日本や韓国など)もちろん武器供与が可能な国から供与してもらいたいのが本音だが、法的な制約も理解している。

  日本に最も求めたいことは。

  一番期待しているのはやはり技術。長期的なインフラ発展のプロジェクトも必要だ。エネルギー、鉄道、開発、医療分野などについても岸田首相と話した。将来、良い結果が期待できると思う。

(共同)

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