-被災地で会員企業が支援活動を展開している。
「これまで50社が道路の車線確保やがれき撤去などの支援活動に取り組んできた。被災地と姉妹都市の自治体や現地の取引先などから要請を受け個別に出動している。協会としては山形県と災害時の応援協定を締結しているが、隣県とは結んでいない。今回のような広域被害を想定していなかったからで、災害復旧のスピードアップを考えれば、県境を越えた協定は今後検討していく必要があるだろう」
-震災後の業況は。
「ガソリンや重油などの燃料不足は痛かった。物流が滞り、アスファルトやセメントなどの資材入手がままならなかった。そのため国発注の工事を中心に、ほとんどの公共工事が1カ月ほどストップした。完成に伴う入金の遅れにつながり、経営が切迫した業者も多いはずだ」
-今、建設業の果たすべき役割をどう考える。
「震災からもうすぐ2カ月。仮設住宅の建設も進み、被災者の生活は落ち着きつつあるが、海岸線の街は見る影もない状態のままだ。現在はがれき撤去などが主体だが、復興に向けた動きも徐々に本格化するだろう。業界としては公共・民間の工事を通じて被災地再生や被災者の生活を支援できればと思っている」
-震災復興による特需が取りざたされている。
「壊滅状態のインフラを再生させるには相当な公共予算が被災地に集中投資されるだろう。ただ、復興に向けた公共事業はほとんどを地元の建設業者が請け負うことになるため、公共工事で山形の業者への特需はあまり期待できないと感じている。ただ民間工事で活路を見いだせるのではないか。住宅などは相当な需要が見込まれ、業者によっては仙台圏での営業を強化する動きも出ているようだ」
-先行きをどう展望する。
「業界は国や県などの予算に左右される面が強い。復興に向け、国の公共投資は当初予算から5%程度が執行留保となり、影響が怖い。今後も被災地以外で公共投資の減少が続くのであれば、地域の安全・安心を守る地元業界の疲弊はより深刻化する。強く訴えていかなければならない。また震災で消費者に自粛ムードが広がっているが、こういう時こそ普段通りの行動が重要ではないか。過敏な反応は経済の停滞につながり、景気も悪循環に陥る」
-震災で感じた県内のインフラ整備の在り方は。
「高速道路は復旧のスピードアップに欠かせないインフラだ。この高速ネットワークは広く網羅されるべきだが、県内はミッシングリンク(欠落箇所)が多く、被災地に向けた新潟ルートの物流は決してスムーズとは言い難い。今回の震災で高速道路の重要性があらためて見直されたのではないか。インフラの地域間格差が広がる中、地方にとって社会資本の整備はまだまだ必要だ。観光や産業の振興のためにも早期整備は必須であり、ひいては県民の安心・安全にもつながるはずだ」
次回は長谷川征男・県自動車産業振興会議代表幹事です。
渋谷建設の渋谷忠昌社長