世界で発生する地震の約10%が集中し、有数の地震列島として知られる日本。全国各地に活断層が走り、その影響は学校施設にも及ぶ。広島大名誉教授・中田高らの調査によると、全国で571校が断層から50メートル以内に位置し、225校は断層の直上にあるという。中田らが2003年、「活断層研究」に発表した論文には、断層の直上や近くに位置する学校の分布図が載っている。本県でも全域にあり、上山市の上山小もそうした学校の一つだ。
細長い丘陵地
上山小は月岡公園の北隣にある。この公園は山形盆地断層帯南部を構成する上山断層のラインに位置。周囲より一段高まっている細長い丘陵地で、市のシンボル上山城も建つ。「上山の地層は、蔵王が10万年前ごろに大噴火した際、山体崩壊による土砂が山津波となって西側に流れ落ちた堆積物でできている。奥羽山脈のある東側から西側に流れたため、西側に滑らかに高度を下げるはずだが、上山の市街地を切るように北東-南西に沿って細長い丘が連なっており、いずれも断層運動によって隆起したと考えられる」。山形大教授の八木浩司は話す。
上山小では現在、改築計画が進められている。活断層の危険性は市議会でも取り上げられ「移転すべきだ」との声も出たが、「保護者や地元の要望もあり」(市教委)同じエリアに建て替えることになった。
八木は市教委から相談を受け、(1)活断層からできるだけ離すこと(2)特に断層をまたぐ構造物は危険なので建設しない(3)断層崖からの落石対策をすべきだ-などとアドバイスした。市教委管理課長の木村義博は「建物を断層から25メートル以上離す他、基本的に2階建ての低層とするなどの対策を取ることにした」と語る。
市街地を横切るように走る上山断層。小高い丘が連なっている(八木浩司氏提供)
避難所に指定
学校など公共施設が断層周辺にあるケースは実は珍しくない。その理由を八木は次のように語る。「もともと断層で隆起した丘は周囲から独立していて小高い位置にあるため水回りが悪く、耕作地としては不向き。広い土地が使われずに残る形となり、公共用地として活用されやすかった」
平均37年周期で発生してきた宮城県沖地震など海溝型地震と違い、活断層による内陸直下型地震は千年あるいは万年単位の周期とされ、断層があるからといってごく近い将来確実に起きるという性質のものではない。しかし「公共施設は災害の際、避難場所に指定されるケースも多い。より手厚い対策が施されるべきだ」。八木は強く訴える。
1999年の台湾中部地震では地震断層の直上にあった校舎が全壊。2008年の中国・四川大地震では小学校の校舎が倒壊し多数の児童が死傷した。日本の建物は耐震性が高いとされるが、東日本大震災で人智の脆弱(ぜいじゃく)さを嫌というほど思い知らされた。「想定外」を可能な限り排除していく努力を、震災後に生きるわれわれは決して怠ってはならない。=敬称略
もっと見る
もっと見る
もっと見る
もっと見る
もっと見る