長者原断層は新庄市角沢から舟形町長者原を通り、高森山近くに至る約10キロの活断層。奥羽山脈の西縁を南北に複数走る新庄盆地断層帯東部のうち、最も盆地内側に位置する。
1000年前に形成
政府の地震調査研究推進本部は2002年、新庄盆地断層帯の長期評価をまとめたが、活動履歴などは不明で、「将来の活動について十分な検討ができない」としていた。そこで、産業技術総合研究所は07年、最新活動時期などを探るため詳細な補完調査を実施。その対象となったのが長者原断層だ。
「長者原断層は断層帯の中で最も活動的とされていた。そのため、補完調査のメーンに据えた」。調査を担当した松浦旅人(原子力安全基盤機構主任研究員)は振り返る。堀内と長者原の両地区で、地面に溝を掘って地層のずれを探るトレンチ(溝)調査などを行った他、ボーリング調査も実施、活動履歴の実態解明を試みた。
その結果、主に二つのことが明らかになった。一つは最新活動時期。松浦は「堀内地区の河岸段丘面には、大地震によって生じた1.6メートルのずれが認められる。この段丘面は、堆積物の年代測定などによって千年前に形成されたと考えられることから、長者原断層は千年前以降に活動したと判断した」と話す。
さらに、最新より一つ前の活動時期は、地層の変位状況などから4500年前~7千年前であることが分かった。
舟形町の長者原地区で2007年に行われた補完調査。断層崖周辺でピット(穴)を掘って、活動履歴などを調べた(松浦旅人氏提供)
評価に不採用
ところが、推進本部は、昨年5月に公表した長期評価の一部改訂で、最新活動については採用しなかった。産総研の調査結果を受けて改訂したにもかかわらず、である。長期評価では、その理由を次のように記す。「(産総研が年代を推定した地表面は)地形環境が安定しておらず、上下変位とされた高度差は必ずしも断層変位であるとは限らないため」。松浦は「推進本部の長期評価では、地震発生時期はよほどの根拠がないと認められない。最新活動時期の認定は解釈の違いであり、意見が異なっても仕方がない」と話す。
仮に松浦の主張通り、最新の地震が千年前以降に発生したとすれば、長期評価で推定した平均活動間隔(4千年程度)から考えて、次の大地震が発生する危険度はそれほど高くないように思える。しかし、松浦はそうした見方を否定する。それはなぜか。
新庄盆地東部では、断層の活動場所が奥羽山脈西縁から徐々に盆地内部に移動していると考えられている。「長者原断層は断層帯東部の中で最も西側にあり、東側の断層に比べて活動的とされていたが、実は最近の研究によって、地震活動の最前線がさらに盆地内部に移った可能性も提示されている」。つまり、長者原断層以外にもマークすべき断層が近くに存在することを示唆するもので、「地震の危機が去ったとは言えず、今後さらに調査が必要だ」。松浦はそう強調する。=敬称略
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