地震列島と称される日本。太平洋プレートが沈み込む日本海溝付近では、これまで巨大地震が繰り返し発生してきた。一方で、日本海側でも過去に大地震が起きたことは、歴史が証明している。
本県でも大きな被害が出た新潟地震(1964年)、104人が犠牲になった日本海中部地震(83年)、奥尻島を襲った北海道南西沖地震(93年)、新潟県中越沖地震(2007年)…。「日本海東縁には数多くの断層がある。山形沖も状況は同じで、日ごろから備えておくことが大事だ」。産業技術総合研究所(産総研)活断層・地震研究センター長の岡村行信は警戒の必要性を語る。
変化富む地形
「日本の地形 東北」(東京大学出版会)によれば、日本海東縁は最も変化に富んだ海底地形が見られる場所の一つで、活発な地殻変動によって形成された。「新潟地震や日本海中部地震は変動の激しさを物語っている」と解説する。
「この海域の断層に共通しているのはインバージョン(反転)です」と岡村。インバージョンは同じ断層が逆方向に再活動する現象だ。
日本列島はかつて大陸と地続きだったが、海側へ引っ張られる力によって大陸から離れ日本海が誕生、現在の列島が形作られた。正断層は日本海が拡大する際、地殻が伸びることで発生。その後、東西圧縮に反転したが、圧縮力は地殻の弱い部分を攻撃するため、一度破壊された線(正断層)が逆断層として再活動したと考えられている。
「日本海東縁が圧縮に転じたのは300万年前ごろ」(岡村)。太古の時代、本当にそんな現象があったと、なぜ言えるのだろうか?
「証拠はあります」。岡村は続けた。「音波探査で日本海の海底断面を調査すると、隆起しているのに、堆積層が厚い地点がたくさんある」。堆積物は低い場所にたまるのが自然の摂理。この矛盾が根拠というわけだ。「かつて沈降していた場所に物がたまり、その後、隆起したため、現在は高い場所なのに厚い堆積層がある」
日本海東縁の断層と褶曲(しゅうきょく)の分布図。数多くの断層が走っていることが分かる(岡村行信氏提供)
潜む危険知る
産総研は、日本海東縁の地質構造や海底の堆積物に残された過去の地震の記録を長年調べてきた。その結果、数多い断層を把握したが、活動周期や最新活動時期に関しては未解明な点も少なくない。
「陸地の活断層は実際に掘って観察し、地層を分析できるが、海底ではそうはいかない」と岡村。「海の中の断層は多すぎるともいわれている。すべての断層が本当に活動的と考えていいのか疑問もある」
どの程度の周期で大地震が起きるのか? 最近動いたのはいつなのか? そうした情報が防災上、大きく役立つことは間違いない。「しかし」。岡村は強調する。「大事なのは対策を取ること。将来の地震を正確に予測することは現状では困難だが、備えを怠らなければ被害は最小限に抑えられる」
大地震が起きたら高い場所に逃げる。陸地での揺れが小さくても大津波が来る場合があるので、地震情報をしっかり確認する。海沿いの住民はもちろんだが、仕事やレジャーで沿岸部に行く人も多いだろう。日本海には大地震を引き起こす可能性のある活断層が数多く潜んでいることをしっかり認識することが、命を守ることにつながる。=敬称略
インバージョンの模式図(岡村行信氏提供)
日本海東縁の断層と褶曲(しゅうきょく)の分布図。数多くの断層が走っていることが分かる(岡村行信氏提供)
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