防災関連企画
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  10. [2016年03月02日]
     

     多くの人命を奪い、建物を破壊した津波。東根市内に住む果樹農家4人は東日本大震災の発生時、宮城県石巻市で濁流に巻き込まれ、九死に一生を得た。あれから間もなく5年。平穏な日常が続く中、恐怖の記憶は鮮明に残る。「生活ががらっと変わったわけではない。けれど、一日一日が貴重なものだと思い生きている」。1人が語り、他の3人も大きくうなずいた。

     津波に遭遇したのは、仲野広幸さん(52)=中島通り1丁目、横尾亮一さん(50)=神町北3丁目、深瀬弘茂さん(48)=板垣北通り、鈴木博之さん(44)=同=の4人。深瀬さんの車に同乗して海釣りに出掛け、釣り場を移動中の女川町付近で強い揺れに襲われ、危険を感じて東根に帰ろうと石巻市内に入った際、津波に巻き込まれた。

     車から個々に脱出し、付近の民家やアパートに助けを求めて不安な一夜を過ごした後、翌日に仲野さん、横尾さん、鈴木さんは車があった現場で再会。自転車を借りて約40キロ離れた大崎市に移動し、迎えに来た家族と震災発生から3日後に東根に戻った。はぐれていた深瀬さんも、避難所での生活を経て3人の帰還から2日後、家に戻った。

    後ろから迫る
     「カーナビで地震のニュースを見ていて、ふと振り返ったら後ろから津波が迫っていた。車が巻き込まれていく光景はまるで漫画や映画のようだった」。仲野さんは当時の恐怖を語る。震災以降、自然災害を伝えるニュースを見ると人ごととは思えなくなった。「震災では、郊外の避難所には支援物資がなかなか届かなかった。そういう場所にこそ目を向けるべきなんだ」と語気を強める。

     横尾さんは大崎市へ向かう途中、道を尋ねるたびに住民から水や食べ物を贈られたことが忘れられない。「人の温かさを感じた。東根でも何かあったら、自分なりにできることはしたいと思う」。一語一語をかみしめるように話した。

    津波に巻き込まれた際に持っていた携帯電話のメールを見ながら、当時を振り返る(左から)仲野広幸さん、鈴木博之さん、深瀬弘茂さん、横尾亮一さん=東根市板垣北通りの深瀬さん宅

    津波に巻き込まれた際に持っていた携帯電話のメールを見ながら、当時を振り返る(左から)仲野広幸さん、鈴木博之さん、深瀬弘茂さん、横尾亮一さん=東根市板垣北通りの深瀬さん宅

    携帯電話今も
     鈴木さんは、被災当時に持っていた携帯電話を今も使っている。家族にようやく無事を知らせることができた時のメールが残る。日付は3月13日。「博之、横尾、仲野、無事でいます。深瀬さんとはぐれました。安否分かりません。車が流されたので歩いています」。鈴木さんは言う。「これを見るたびに命が助かったこと、家族がいることのありがたさを感じるんだ」

     深瀬さんは震災後、好きだった酒をやめ、2年ほど前からは交通指導員を務めるようになった。「なぜかは分からないんだけど、死んでいてもおかしくない経験をして、心境に変化があったのかな」。車から脱出した後、家に泊めてくれた石巻の住民とは今も交流を続けており、あちらからはサンマ、こちらからはサクランボを贈り合っている。

     生死の分かれ目となった3月11日。4人は毎年この日に会い、当時を振り返りながら飲食する。「仮設住宅に暮らす人は多く、被災地の復興はまだまだ進んでいない。震災を風化させてはいけない」。震災の記憶を心に刻み続けている。

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