やまがた橋物語前川編[6]◆矢来橋(上山)
蔵王連峰などの眺望が楽しめるおくりびとロケ地の人気スポット。下流側に朱色の矢来橋が見える=上山市
米アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「おくりびと」のロケ地となった上山市二日町の「上山コンチェルト館」のすぐ脇を前川は流れる。館内もさることながら、ロケ地裏手の風景も観光客に人気のスポット。川のせせらぎと蔵王連峰の眺望を楽しんでいると、鮮やかな朱色が映える橋の存在に気付かされる。それが1968(昭和43)年に架けられた矢来橋(全長23.8メートル)だ。 68年の河川改修工事に伴い、石積みの橋から高強度コンクリート製に架け替えられた。当時、橋に連なる同市矢来1丁目の市道は上山の「メーンストリート」。同地区に長く住む山口登美夫さん(79)が「楢下地区に行く時にはこの道しかなかった。誰もが通った橋だった」と語るように住民になじみの深い橋だ。 橋を中心として道沿いに八百屋や鮮魚店、雑貨屋などの商店がひしめき、買い物客でにぎわった。だが、矢来橋の架設と同時にJRかみのやま温泉駅周辺の県道整備が進むなどしてアクセス道は一変。人通りは少なくなった。 当初の色は灰色。欄干のコンクリートがはがれるなど傷みが目立ち始めたため、地元住民の要望を受け、2005年に現在の色に塗り替えられた。 映画で上山のロケ地は主人公の実家という重要な設定で撮影された。映画効果でこれまでに2万人以上の観光客が訪れ、市内をにぎわせている。滝田洋二郎監督は、100カ所以上の候補地から上山を選んだ理由についてこう語っている。「川があり、奥に山があって、家がある。一目見て、よくあるけど普通じゃないことをちゃんと描くことができると直感で決めた」。その風景の中に、矢来橋はある。どこか郷愁を感じさせるこの橋が、ロケ地選定に一役買ったと想像してしまう。 2010/03/09掲載
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