やまがた橋物語

須川編第2部[8]

◆京塚橋(上山)

京塚橋(上山)の写真 田園地帯に架かる京塚橋。朝夕には近くにある宮川中の生徒が渡る=上山市

 上山市皆沢の田園地帯に「京塚橋」はある。現在の橋は全長八十一メートル、幅六・六メートルで、一九八〇(昭和五十五)年に架け替えられた。橋の歴史をさかのぼると、小字の地名と同じ京塚橋と名付けられたのは、五七(同三十二)年に完成した先代の橋からのようで、それ以前は住民でも知る人は少ないのだが「平和橋」と呼ばれていた。

 「ミナザワ」と大字の地名が彫られた丸太の橋が、三四(同九)年ごろに欄干付きの木橋に架け替えられた。これが平和橋で、近くに住む阿部光男さん(80)によると、欄干に「平和橋」とはっきり刻まれていたという。なぜ平和としたのか確かな理由は分からないというが、阿部さんは「世の中が平和になるように、また水難事故などが起こらないように、と願いを託したのだろう」と語る。

 阿部さんには忘れられない思い出がある。四九(同二十四)年、洪水で橋の付け根部分の道路が崩落し、橋の継ぎ足しと堤防造りも兼ねた修復工事の作業員として地区の若者が駆り出された。当時二十二歳の阿部さんもひと冬、寒さに耐えながら土運びなどを繰り返し、力を尽くした。そして迎えた春、市内の足ノ口に住んでいた十九歳のとく子さん(77)と結婚した。

 工事を終えたばかりの橋を初めて車が渡ってきた。それは阿部さんの家で行われる結婚式に臨むため、花嫁姿のとく子さんが緊張しながら乗っていたタクシーだった。「自分が復旧に携わった橋を妻が真っ先に渡ってきたかと思うと感慨深く胸が熱くなった」。とく子さんは「田んぼに挟まれたでこぼこ道を通って橋を渡った。式では恥ずかしくてお互いに顔を見られなくてねえ」とほほ笑んだ。

2008/05/20掲載

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