やまがた橋物語

最上小国川編[10]

◆瀬見橋(最上)

瀬見橋(最上)の写真 長年、瀬見温泉の表玄関の役割を果たしてきた瀬見橋=最上町

 「瀬見橋」は長年、瀬見温泉の玄関口として住民や温泉客らに親しまれてきた。江戸時代、1700年以前には現在より少し下流に架橋されていたと地元に伝わる。1892(明治25)年、今の場所に木造トラス橋が架けられ、現在の橋は1935(昭和10)年に完成した。

 最上町史によると、温泉客は明治時代には県内外から訪れており、15(大正4)年の陸羽東線新庄-瀬見間の開通以降、さらに増えた。27(昭和2)年は年間12万人に達した-との記録が残る。駅に降りた客たちは、瀬見橋を渡って宿に向かった。夏は夕涼みの客が橋にたたずみ、灯籠(とうろう)流しを見物。64(昭和39)年に瀬見温泉スキー場がオープンし、スキー客でにぎわった時期もあった。

 橋の長さは49.5メートル。左岸のたもとにある佐藤酒造店の社長佐藤恭平さん(66)が、この長さにまつわる小学生時代の思い出を披露してくれた。戦後の1950年代前半、瀬見小はまだ温泉街東南部にあった。校庭が狭く、50メートル走のための直線コースを確保できなかった。このため、児童たちは瀬見橋の上を1人ずつ走ってタイムを計測したという。「今の国道に向かって走ったと思う。卒業するまで何度か走ったはず」。橋の上を懸命に走る子どもたちの姿を想像すると、何ともほほ笑ましい。

 幅は5.5メートル。この狭さから、車社会の進展とともに玄関口の役割は義経大橋に譲ったが、温泉街と国道47号を最短で結ぶルートとして地域住民にとって大切な橋であることは、今も変わらない。

2010/09/28掲載

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