やまがた橋物語

立谷川編[10]

◆立谷川橋(山形、天童)

立谷川橋(山形、天童)の写真 架橋から半世紀が経過した立谷川橋。去年12月の補強工事で雰囲気が一新された=山形市漆山

 天童市高擶と山形市漆山を結ぶ立谷川橋は長さ121メートル、幅7メートル。1956(昭和31)年に架橋された。もともとは江戸時代の羽州街道に由来する。人々の往来を支えたその道路は明治に入って国道40号、大正時代に同5号、52(昭和27)年に同13号と変遷をたどり、バイパス開通に伴い83(同58)年、主要地方道山形天童線になった。

 橋のたもと、漆山に住む伊藤喜友さん(77)は「小学生のころ、丸太組みだった橋桁の下には、スズメが数多く巣を作っていた。その巣から卵を“いただいた”こともあった。戦争前後の食料が乏しい時代だったからね」と話す。

 その橋は、今より上流部にあった。橋桁は河床から2メートルほどの高さで、子どもでも橋脚をよじ登ると手が届いたという。高い堤防の上に設けられた現在の橋は、約7メートルの高さがある。

 去年12月、橋桁をコンクリートで補強する工事が行われた。同時に、灰色で厚みのあるコンクリート製だった欄干が焦げ茶色の細い鉄パイプに変更され、印象が大きく変わった。橋の両端の親柱だけは架橋当時のまま残され、半世紀以上の歴史を刻んでいる。

 明治後期の作家田山花袋が、天童市高擶に居住した両親をモデルにして書いた小説「生」に立谷川が登場する。仕事帰りの父親が、ほかの鳥につつかれているフクロウを捕まえて家に持ち帰るシーンで、場所は立谷川橋付近と推測されている。近くの住民は「昔はフクロウの声を聞いたが、いつの間にか聞こえなくなった」。初夏の今、橋の周辺で聞こえるのは甲高いキジの鳴き声だ。

2011/05/18掲載

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