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【海坂藩の風景】蟬しぐれ 旧渋谷家住宅・鶴岡

2017年04月13日
主人公の牧文四郎と友人が再会を祝い、酒を飲み交わす場面が撮影された「旧渋谷家住宅」 =鶴岡市・致道博物館(イラストは登場人物のイメージ)
主人公の牧文四郎と友人が再会を祝い、酒を飲み交わす場面が撮影された「旧渋谷家住宅」 =鶴岡市・致道博物館(イラストは登場人物のイメージ)
 海坂藩のお世継ぎ問題に巻き込まれ、父を失った牧文四郎の成長と、隣家の娘で藩主の側室になったふくとの秘められた恋を描いた「蝉しぐれ」。映画の中で、鶴岡市の致道博物館にある国指定重要文化財「旧渋谷家住宅」は、文四郎(市川染五郎)と友人の逸平(ふかわりょう)、江戸から戻った与之助(今田耕司)が久しぶりに再会し、酒を酌み交わした店として登場する。

 1822(文政5)年築の民家は木造3階建て4層構造で、「かぶと造り」のかやぶき屋根が特徴。1965(昭和40)年に旧朝日村(現鶴岡市)の田麦俣から移築された。むしろの織り機や養蚕の道具が置かれ、昔の豪雪地帯の暮らしぶりに触れられる。

 文四郎らがいる部屋は、仏壇と神棚、いろりがあり、生活の中心だった「御前」。撮影は夏場の日中に行われ、展示品を全て運び出した後、シートで出入り口や障子を覆い、夜の酒場を演出した。重要文化財の制約がある中、素朴な古民家をあでやかな空間に生まれ変わらせたスタッフの技に驚く。このシーンには酌婦として渡辺えりさん(山形市出身)の姿も。同博物館の酒井忠久館長は「役者さんたちは暑くて大変だったと思う。ちょんまげ姿のエキストラに見慣れると、それが自然な風景のように感じられて不思議だった」と振り返った。
(報道部・鈴木悟)

【蝉しぐれ】
 ▽監督=黒土三男
 ▽出演=市川染五郎、木村佳乃、緒形拳(2005年)

「旧渋谷家住宅」の外観。「かぶと造り」の屋根が美しい
「旧渋谷家住宅」の外観。「かぶと造り」の屋根が美しい


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