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【海坂藩の風景】蟬しぐれ 赤川沿いのケヤキの大木・鶴岡

2017年06月08日
水神様の祠と鳥居が目印。後ろが撮影で使われたケヤキ。木は赤川沿いぎりぎりに立っているため、足元に注意が必要
水神様の祠と鳥居が目印。後ろが撮影で使われたケヤキ。木は赤川沿いぎりぎりに立っているため、足元に注意が必要
 子どもの頃、気の置けない仲間たちが自然に集まる場所があった。たわいもない話で盛り上がり、時には大人に言いにくいことを打ち明けたりもした。「蝉しぐれ」の主人公牧文四郎と親友の小和田逸平、島崎与之助は、問題に直面すると決まって川沿いのケヤキの大木に向かった。3人にとって特別な場所といっていい大木は、鶴岡市東岩本の赤川沿いに堂々と立っている。

 剣術の道場で叱られ落ち込む少年与之助は、この木で文四郎と逸平に学問を修めるための江戸行きを相談する。大人になった文四郎は、家老の里村から藩主の側室となった幼なじみ・お福の子をさらってくるよう命じられる。そのことを2人に伝え、ある策の実行を決意したのもこの場所だった。原作小説ではそれぞれ五間川の「石置き場」と「逸平の家」が相談場所になっている。「人生を左右する重要な相談=ケヤキの大木」とした映画の方が、3人の揺るぎない絆をより表現しているように思える。

 ケヤキの大木は、水神様を祭る祠(ほこら)を守るようにしてあり、地表には複数の太い根が隆起している。自宅裏にある祠を管理している小野寺勇さん(64)は「映画でも少年が川に落ちるシーンがあるが、昔は木の周りが河原になっていてよく泳いだ。今でも夏になると中高生が木の枝を伝って、飛び込んでいるのを見るよ」と話した。(報道部・鈴木悟)

 文四郎と逸平、与之助の相談場所として登場する赤川沿いのケヤキの大木=鶴岡市東岩本(イラストは登場人物のイメージ)
文四郎と逸平、与之助の相談場所として登場する赤川沿いのケヤキの大木=鶴岡市東岩本(イラストは登場人物のイメージ)
=木曜日に掲載します

 【蝉しぐれ】
 ▽監督=黒土三男
 ▽出演=市川染五郎、木村佳乃、緒形拳
(2005年)

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