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【海坂藩の風景】隠し剣鬼の爪 赤川河川敷・鶴岡

2017年06月22日
「隠し剣鬼の爪」で射撃訓練を撮影した赤川河川敷。木々が生い茂り、当時の様子は全く想像できないが、草木を刈り取って広場を作った。中央奥の松の木が目印=鶴岡市羽黒町石野新田(イラストは場面のイメージ)
「隠し剣鬼の爪」で射撃訓練を撮影した赤川河川敷。木々が生い茂り、当時の様子は全く想像できないが、草木を刈り取って広場を作った。中央奥の松の木が目印=鶴岡市羽黒町石野新田(イラストは場面のイメージ)
 「ぶぅぉー、ぶぉー」。ほら貝の音を合図に射撃訓練が始まる。「隠し剣鬼の爪」の序盤に出てくるこのシーンは、鶴岡市羽黒町石野新田の赤川河川敷で撮影された。現在は草木が生い茂り、当時の風景は見る影もない。木々に囲まれた松の木だけが、ロケ地であることを示す唯一の目印だ。

 撮影は2003年春。松の周辺の草木を刈り取り、やぐらを設置し、広場に仕上げた。当時、いでは文化記念館の臨時職員として、現場で誘導などを行った早坂一広さん(46)は「いつも見ている河川敷が、全く違う場所に変わっていた。プロの技にただただ驚いた」と振り返る。

 早坂さんは同市羽黒町手向で宿坊を営む山伏でもあり、撮影中、突然、ほら貝の音が欲しいと言い出した山田洋次監督に呼ばれたという。ほら貝がなく断ったが、山田監督は「口で出して」と引き下がらない。独特のオーラに気おされ、直立不動で再現したところ、即採用された。実際には出羽三山神社の職員が吹いたが、早坂さんの頑張りが山伏の出番をつくり出したことは間違いない。松の木を見ると、ほら貝の音が聞こえてくるようだ。
(鶴岡支社・木村友香理)

 【隠し剣鬼の爪】
 ▽監督=山田洋次
 ▽出演=永瀬正敏、松たか子(2004年)

鶴岡市民らが親しんでいる赤川。左側の河川敷で撮影された
鶴岡市民らが親しんでいる赤川。左側の河川敷で撮影された


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