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【海坂藩の風景】隠し剣鬼の爪 金峯神社の参道・鶴岡

2017年07月20日
弥市郎が座敷牢へと運ばれたシーンが撮影された=鶴岡市青龍寺(イラストは場面のイメージ)
弥市郎が座敷牢へと運ばれたシーンが撮影された=鶴岡市青龍寺(イラストは場面のイメージ)
 かつては修験で栄え、御魂(みたま)が宿るお山として知られた鶴岡市の金峯山。金峯神社に向かう参道は幻想的な雰囲気に包まれ、「隠し剣鬼の爪」で謀反の首謀者となった狭間弥市郎(小沢征悦)を座敷牢(ろう)に運ぶシーンが撮影された。真っ暗闇の中、列を成した侍たちが持つ、ちょうちんの明かりだけが浮かび上がる。

 参道の両脇には、約400年前に奉納された杉5千本とともに、無数の石碑が並ぶ。石碑には人名や「伊勢拝」などの文字が刻まれており、こけむしたさまに過ぎ去った時の長さを感じる。寺子屋の先生や恩師の御魂を祭ってお参りに訪れたり、伊勢神宮への参拝から無事に帰ってきたお礼を兼ねて置いたりするうちに増えていったという。

参道の入り口。右側には大酒飲みが直るという「禁酒のかめ」がある
参道の入り口。右側には大酒飲みが直るという「禁酒のかめ」がある
 映画の場面は、弥市郎が閉じ込められた座敷牢として使った桜谷神社の目の前。緑色のコケがびっしりと付いたひょうたんのような形の石が目印だ。同神社の佐々木孝善宮司(68)は「映画が公開された頃はロケ地を見に来る人が多く、参拝客も増えた。庄内平野が一望できる金峯山の魅力を知ってもらうきっかけになった」と話す。

 5月にこの企画で桜谷神社を取材した際は、1人で夕方に撮影した。座敷牢のイメージも重なり不気味さが勝ってしまったが、今回、早朝に訪れ、その恐怖心は払拭(ふつしよく)された。木々の間から差し込む光にすがすがしい空気。参道の両脇を流れる沢の音も心地よい。豊かな自然にパワーをもらい、何だか足取りも軽くなった気がした。

(鶴岡支社・木村友香理)

 【隠し剣鬼の爪】
 ▽監督=山田洋次
 ▽出演=永瀬正敏、松たか子(2004年)
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