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【海坂藩の風景】小川の辺 馬見ケ崎川・山形

2017年10月19日
戌井朔之助と佐久間森衛が決闘を繰り広げるシーンが撮影された馬見ケ崎川上流=山形市下宝沢(イラストは場面のイメージ)
戌井朔之助と佐久間森衛が決闘を繰り広げるシーンが撮影された馬見ケ崎川上流=山形市下宝沢(イラストは場面のイメージ)
 戌井朔之助(いぬいさくのすけ)(東山紀之)と佐久間森衛(もりえ)(片岡愛之助)の決闘が繰り広げられるのはまさにタイトル通りの小川の辺(ほとり)。岸には佐久間夫婦が暮らす小屋が立つ。藩に追われる者が身を潜めるのにふさわしい静寂に包まれた場所だ。

 人里離れた所で撮影したのだろうと思わせるが、山形市下宝沢のロケ地は国道286号からわずか数百メートル。ロケハンで最初に訪れた春先は雪解け水で川が増水、木々の間から近くの東沢小や民家が見えたため、採用とならず、東京近郊で探すことになった。映画の最重要シーン。当時山形フィルムコミッションの担当だった山川渉さん(47)=市職員=は県内での撮影をあきらめきれず、その後も最上地方まで足を運ぶなどロケ地を探し続けたという。

 山川さんに製作側から再び連絡がきたのは8月。下宝沢を再訪すると、水量は激減、茂った木々の葉で周囲の人工物も隠され、候補地の中でスタッフが思い描く情景に最も近かった。ただ、山川さんはじめ大きな石が並ぶ一角が気になった。美術監督の金田克美さんがその場で1、2時間考え、大きな石が違和感なく風景に溶け込めるような設定を絵にまとめた。

美術監督の金田さんが描いた絵。左にある大きな石を違和感なく風景に組み込めるよう屋根を掛けることを発案した
美術監督の金田さんが描いた絵。左にある大きな石を違和感なく風景に組み込めるよう屋根を掛けることを発案した
 篠原哲雄監督も交えた翌日のロケハンで監督らは案の定、その一角を気にした。そこで金田さんがすかさず準備した絵を見せ、監督らに説明。大きな石に屋根を掛けることで、石切り場に見立てたのだ。裏側を知ると、名場面はまた違って見えてくる。
(報道部・大坪千絵)

【小川の辺】
 ▽監督=篠原哲雄
 ▽出演=東山紀之、片岡愛之助(2011年)

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