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【海坂藩の風景】蟬しぐれ 雷電神社・鶴岡

2017年11月30日
牧文四郎が親友を助けるため、大勢のけんか相手に立ち向かうシーンを撮影=鶴岡市羽黒町高寺(イラストは場面のイメージ)
牧文四郎が親友を助けるため、大勢のけんか相手に立ち向かうシーンを撮影=鶴岡市羽黒町高寺(イラストは場面のイメージ)
 藤沢周平さんの代表作の一つに挙がる「蝉しぐれ」は主人公の牧文四郎をはじめ、幼なじみで後に数奇な運命によって再会するふく、成長してなお固い絆で結ばれる2人の親友、死罪にあっても義を貫く父助左衛門など魅力的な人物が多く登場する。大滝秀治、柄本明、大地康雄、三谷昇など脇を固める俳優陣の顔触れも個人的にうれしい。

 庄内を中心に撮影され、多くの主要シーンを生んだ。鶴岡市羽黒町高寺にある雷電神社は、若き文四郎が親友を守るべく少年たちにけんかを挑む舞台となった。ふくと出掛けた夜祭りを抜け出し、石段を駆け上がった先に杉木立に囲まれた社殿が映る。大勢を前にひるむことなく歩を進める文四郎の背中が頼もしい。

雷電神社に伝わる「高寺八講」は祭りのシーンに登場する。写真は今年5月4日に奉納上演された伝統の舞
雷電神社に伝わる「高寺八講」は祭りのシーンに登場する。写真は今年5月4日に奉納上演された伝統の舞
 出羽三山の開祖とされる蜂子皇子(はちこのおうじ)が立ち寄ったと伝わる高寺集落には、718年創建の高寺山照光寺と丘に立つ雷電神社がある。30戸ほどの集落だが、五穀豊穣(ほうじょう)を願う舞「高寺八講」が地元住民によって受け継がれている。舞の一つ「花笠舞」の演者として、夜祭りの場面で協力した農業加藤欣也さん(45)は「自分のアップが一瞬映っており、友人知人に多く声を掛けられた」と笑う。加藤さんは現在、稚児舞の指導役を担う。地域の宝である寺院芸能が息づいている。
(鶴岡支社・佐々木亨)

【蝉しぐれ】
▽監督=黒土三男
▽出演=市川染五郎、木村佳乃、緒形拳
(2005年)
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