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【海坂藩の風景】蟬しぐれ 旧風間家住宅「丙申堂」・鶴岡

2017年12月14日
牧文四郎とお福さまが約20年ぶりに再会するラストシーンが撮影された=鶴岡市馬場町・丙申堂(イラストは場面のイメージ)
牧文四郎とお福さまが約20年ぶりに再会するラストシーンが撮影された=鶴岡市馬場町・丙申堂(イラストは場面のイメージ)
 映画「蝉しぐれ」のラストシーン。舟の上で、牧文四郎(市川染五郎)は1通の手紙を読んでいる。差出人は、幼なじみで藩主の側室となったお福さま(木村佳乃)だった。秋に尼になること、その前に「あなたさまに一度お会いしたい」と書かれていた。

 文四郎がお世継ぎ争いに巻き込まれ、お福さまとその子を救ってから20年ほどの月日がたっている。宿の日本庭園に臨む部屋で再会した2人は、静かに来し方を語り合う。しばらくして、お福さまは意を決したように、胸に秘めていた思いを伝える。すれ違っていた人生はようやく交わる。その「言葉」は何とも切なく、胸に迫る。いつ見ても涙をこらえるのを苦労するシーンだ。

座敷から望む庭園。丙申堂の今年の営業は終了しており、来年は3月1~31日におひなさまの特別展示で開館する。一般公開は4月10日から
座敷から望む庭園。丙申堂の今年の営業は終了しており、来年は3月1~31日におひなさまの特別展示で開館する。一般公開は4月10日から
 撮影場所は鶴岡市の国指定重要文化財・旧風間家住宅「丙申堂」の小座敷。かつては客人を泊めるために使われていた。ロケ時には塀の奥が見えないよう、スタッフが竹を立て掛けたのだという。建物を管理する公益財団法人克念社の常務理事・上野康成さんは「映画の中の2人と同じ場所に座って写真を撮る夫婦も多い」と話していた。庭に目をやると紅葉が雨にぬれていた。今度は大切な人と一緒に来てみようか。

(報道部・鈴木悟)

【蝉しぐれ】
▽監督=黒土三男
▽出演=市川染五郎、木村佳乃、緒形拳
(2005年)

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