山形にフル規格新幹線を

ミニ新幹線の功罪(上) 地方創生実現の要、高速交通時代が到来

2017年01月01日
山形市街地をバックに走行する上り山形新幹線つばさ。1992年にミニ新幹線として開業し本県交通網の主軸となってきた=上山市金瓶
山形市街地をバックに走行する上り山形新幹線つばさ。1992年にミニ新幹線として開業し本県交通網の主軸となってきた=上山市金瓶
 年の瀬も迫った1987(昭和62)年12月28日未明。山形新幹線の導入が決まった。日本で初めて、新幹線と在来線が相互乗り入れする新たな整備手法。「新幹線直行特急」と名付けられた構想は大蔵省(現財務省)原案で見送られ、復活折衝でも整備新幹線建設問題と絡んで難航したが、土壇場で1億7千万円が計上された。それから4年7カ月後の1992年7月、山形-福島間が開業。東京駅直通の大動脈が誕生し、本県を新たなステージへと引き上げた。

 山形新幹線構想は86年暮れに急浮上した。県は早期実現期成同盟会を組織し、国や国鉄(87年からJR東日本)に陳情活動を展開した。国鉄改革の渦の中、山形新幹線実現に奔走した元衆院議員の鹿野道彦氏は運輸政務次官、自民党の交通部会長、総務局長を歴任。衆院運輸常任委員長だった86年、調査費の初計上に携わった。

 鹿野氏によると、当時の国会は、オイルショックと国鉄の財政赤字で整備新幹線がとん挫する状況にあったという。政府代表として東北新幹線の開通を祝う式典に出席した鹿野氏は「開業効果、経済活動で本県を含む非沿線県との差が今後、歴然となる。将来人口、企業立地はもちろん、教育や人材確保の面でも恩恵が得られない」との危機感を強めたと述懐する。

 自民党で運輸族の道を歩んだ鹿野氏は、国鉄の技術畑と勉強会を開催。新幹線と在来線を併用する軌道改良の問題、新型車両建造などで議論を重ねた。整備新幹線とん挫で荒れ模様の国政の中、コスト削減や工期短縮などを勘案し、新幹線直行特急を推進した。「あえて(88年度の)大蔵原案に盛り込まず、潜航して生き延びる戦法を採った」。整備新幹線ではなく、在来線改良事業だと周囲を説き伏せ、予算化を実現させた。一報に触れ「あのうれしさは言いようがなかった」と話す。

 福島乗り換えが解消され、山形-東京間が最短2時間27分と従来より約40分間、短縮。山形新幹線の開業は、本県にとって高速交通時代の幕開けともなった。開業から1年。山形新幹線の開業効果は多方面で、もたらされた。利用者数が延べ約300万人以上と、予想を上回る乗客を運び、時間的な距離感を覚える「4時間の壁」を大きく下回ったことや、東京駅に「山形」の地名が掲げられたことでのPR効果は計り知れない。

 利用者の4割近くをビジネス客が占め、経済活動も活発化した。沿線の山形市、上山市、南陽市、高畠町、米沢市の沿線自治体は「列車を止めるのはお客さん。利用するところに止まる」とのJR側の意向を踏まえ、個性的なまちづくりを掲げ、受け入れ態勢を整えた。

 構想段階で、山形新幹線は奥羽本線、仙山線の2ルートがあった。奥羽本線を主導した鹿野氏は「国鉄改革の一番の目玉は、地域を大切にすることだった。奥羽本線はまさに県土をつなぐルートとなった」と説明する。雪対策の軌道研究、併用の新型車両開発などの技術革新という面でも山形新幹線が国に与えた恩恵は大きいと続ける。

 山形までの開業から四半世紀を迎え、今まさに、フル規格新幹線を求める機運が県内で萌芽(ほうが)している。そうした光景に、鹿野氏は「財源」を最大の課題に挙げる。そして「めちゃくちゃになって、必要だと声を上げることだ」と話す。

 現在の山形新幹線は、多くの情熱と行動力とで誕生した。「山形新幹線開業は山形にとって、まさにベルリンの壁の崩壊だった」と鹿野氏。時代が変化し、世界が、日本が高速化している。地方創生が叫ばれる今こそ、県民挙げてフル規格新幹線の必要性を訴え、知恵を絞り、連携することが大切ではないか。
(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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