山形にフル規格新幹線を

ミニ新幹線の功罪(中) 招いた空路の衰退/鉄路との「共存は可能」

2017年01月03日
山形新幹線の開業、新庄延伸で厳しい局面が続いた山形空港=東根市
山形新幹線の開業、新庄延伸で厳しい局面が続いた山形空港=東根市
 山形県に高速交通時代の息吹を吹き込んだ山形新幹線。1992年の山形-福島間開業、99年の新庄延伸と、その波は県土を縦断した。県内の各自治体に停車し、乗り換えなしで首都圏につながる大動脈はビジネス利用者、観光客の選択肢を大きく広げた。山形新幹線の登場は本県にとっての交通革命とも言える。その歩みは、山形空港の衰退とぴたりと重なる。

 山形空港(東根市)の開港は64(昭和39)年。40人乗りの東京便が1日1往復就航した。徐々に1日当たりの便数が増加し、機体も大型化。山形新幹線の運行開始前の最盛期には234人乗りの機体が投入され、1日5往復が就航した。

 だが、山形新幹線が開業した92年以降は便数が減少、新庄延伸の99年には1日1往復にまで縮小した。2002年には一時、廃止された。03年に1日1往復が復活した後、国土交通省の政策コンテスト枠獲得でようやく、14年から1日2往復に復調している。

 就航便数の減少は年間利用者数にも直結した。東京便が就航した1964年から半世紀、利用者数のピークは山形新幹線開業直前の91年で、47万618人に上った。開業した92年は前年から約4万5千人の大幅減。新庄延伸の99年にはついに20万人台を割り込んだ。

 山形新幹線の登場前、空路は本県の高速交通ネットワークのけん引役だった。新幹線開業の陰で減便がささやかれた93年、空港の衰退に危機感を覚えた内陸地方の市町村や県、関係機関、経済団体などは山形空港利用拡大推進協議会を結成。空港の活用、機能の拡充を目的に、組織的な運動に走り出した。

 空港所在市・東根市の土田正剛市長は、山形新幹線の新庄延伸前年、98年に初当選した。市長就任で最初に取り組んだ“仕事”として、新駅の名称を挙げる。

 新庄-山形間で唯一の新設駅。そこに果物の名前を付けた「さくらんぼ東根駅」は当時、全国的にも異例だった。「JR東日本仙台支社に行っても、話が通じない。本社に直談判した」と土田氏。「新幹線の駅に“さくらんぼ”が付くなんて、誰も思ってもいなかった。その実現で、街の様相が劇的に変わった」と振り返る。

 本県有数の果樹産地を形成する東根市は「さくらんぼ」を前面に押し出したまちづくりを展開。温泉名などに「さくらんぼ」を次々と付け、新庄延伸3周年記念としてスタートした「果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン大会」は1万2千人超のランナーがエントリーするまでに成長した。新駅を起点に新たな街並みが誕生。2015年国勢調査で県内市町村で唯一、東根市の人口は増加している。

 一方、「空港はガタガタになった」と土田氏。「フライト時間も不便な時間帯になり、ビジネス面では使いづらい。朝晩(2往復の)ダイヤが実現すれば、山形新幹線との共存共栄は可能だと訴えてきた」。その熱意が実り、一時は存続さえ危ぶまれた山形空港で、東京便が14年から朝夕2往復に拡充された。航空会社と地元が路線の損益を半分ずつ共有する全国初の制度「路線収支共有制度」の導入などで、国交省の政策コンテスト枠を勝ち取った。

 山形新幹線開業から25年。歩調を合わせる形で低迷した山形空港は、今年3月からの札幌便再開など、復調の兆しを見せ始めている。土田氏は「空路と鉄路の相互利用の方法や、両者を持つことが利便性向上につながることへの理解が県内でも深まってきた」と語る。

 一方、本県高速交通網の主役の座を航空機から奪った山形新幹線は近年、全国的に時間距離の優位性を失いつつある。

 山形新幹線のフル規格化に関し、土田氏は福島県境部の改良、山形駅までのフル規格整備と段階を踏むべきだと指摘する。そして、さまざまな課題を一つ一つ明確にしていく必要性も明示する。「今の山形新幹線は沿線自治体に停車するが、フル規格になったら通過自治体が生まれ、自治体間の利害が絡む。止まらない地域の交通体系をどう描くのか。県はしっかりと説明するべきだろう」

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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