山形にフル規格新幹線を

克服(2)峠 米沢の県境、闘いの歴史

2017年01月06日
国鉄時代から全国屈指の急勾配区間の板谷峠。左に見える「36」の標識は1キロ進むと36メートルの高低差があることを示す=米沢市・板谷駅
国鉄時代から全国屈指の急勾配区間の板谷峠。左に見える「36」の標識は1キロ進むと36メートルの高低差があることを示す=米沢市・板谷駅
 本県は奥羽山脈や出羽山地など急峻(きゅうしゅん)な山地で主要地域が分断されている。隣県の福島県境には奥羽、吾妻山系の山々が立ちはだかり、長く交流や物流の阻害要因となってきた。「栗子隧道(ずいどう)」を開削した初代県令三島通庸(みちつね)の時代から、本県の地域開発は峠との闘いの歴史だったといえる。フル規格による奥羽新幹線の実現には、県境にそびえる「板谷峠」をいかに克服するかが大きな課題となる。

 米沢市の栗子隧道は国道13号の東・西栗子トンネルの前身として、本県の発展の礎を築いた。1881(明治14)年、東アジア初の本格的な山岳道路工事として造られた幹線道路「万世大路(ばんせいたいろ)」の中で最大の難工事とされる。日本大人文科学研究所研究員の小形利彦氏(山形市)は、原資料をひもといて工事の様子を著した「山形県初代県令三島通庸とその周辺」の中で「近代日本における土木工事の夜明け・黎明(れいめい)期のできごととして歴史に残る偉業であった」と解説する。

 工事には当時、世界に3台しかない蒸気エンジンの米国製削岩機を導入した。削岩した穴に火薬やニトログリセリンを詰め、岩盤を爆破しながら掘削を進める5年がかりの大工事だった。地元郷土史には「人々の往来、物資の集散共に産業の隆盛に資した」との記述が残り、小形氏は「先駆的な隧道工事はその後の鉄道整備などに生かされた」と指摘している。

 一方、鉄路で峠克服の歴史を象徴するのが奥羽本線米沢―福島駅間にある板谷峠だ。千メートルの距離の高低差は最大約38メートルで、JRの幹線内で全国一の急勾配区間。山形新幹線が開業する直前の1990年まで、峠の急坂を上り下りするためにスイッチバック方式が大沢、峠、板谷の県内3駅で採用されていた。蒸気機関車(SL)や旧式普通列車の限界を超える勾配のため、平たん部の駅にいったん列車を引き込み、再発車で勢いを付けて上り坂に向かわなくてはならなかった。

 一帯は標高が高く、自然環境が厳しい豪雪地帯。山形新幹線はこの区間を中心に大雪や大雨による運休・遅延が相次いでいる。2016年6月、市町村レベルではいち早く山形新幹線のフル規格化を目指す「米沢市奥羽新幹線整備実現同盟会」を発足させた中川勝米沢市長は「山形新幹線が止まる原因をつくっているのが板谷峠。本県の『入り口』となる自治体の長として何とかしなくてはならないとの思いがある」と語る。

 中川市長は「峠の克服は長年の課題。急傾斜を縫うように走る路線では災害の危険性が高く、雪の多さも弊害になっている」としてフル規格仕様のトンネルの必要性を訴える。県も15年度、長大トンネルの可能性に踏み込みながら米沢―福島間の安定性確保をJR東日本に要請した。JR側は15年度から2年をかけて抜本的な防災対策の調査、検討に着手している。

 17年度は東北中央自動車道福島―米沢北間が開通する。峠を貫く栗子トンネル(8972メートル)は傾斜が緩やかで安定性が格段に向上することになる。中川市長は「これでようやく『一流選手』の仲間入りができる」。そして、すぐにこう続けた。「しかし、本当の意味で一流になるのは、道路と鉄道がそろった時だ」「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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