山形にフル規格新幹線を

克服(4)時間 「近い」ってなんだろう

2017年01月08日
Uターン客で混雑するJR山形駅新幹線ホーム。つばさの時間的優位性は年々薄れてきている=山形市
Uターン客で混雑するJR山形駅新幹線ホーム。つばさの時間的優位性は年々薄れてきている=山形市
 「近い」「遠い」―。人はどのような尺度で距離を捉えるのか。まずは単に移動距離という地理的な長さがある。他に「公共交通機関を使えば○時間」「自家用車だったら×時間」などと所要時間から判断する距離感もある。山岳部や海を隔てた位置関係だったり、乗り換え回数といった煩雑さだったりと心理的な要素もあるだろう。

 新幹線に在来線が乗り入れる山形新幹線は1992年に開業。山形―東京間の所要時間を従来より約40分短縮した。何よりも福島での乗り換えがなくなったことで心理的負担が解消された。山形新幹線が本県の高速交通時代を切り開いたと言われるゆえんでもある。

 現在、山形―東京間は最速で2時間26分。新庄―東京間は3時間11分で、酒田―東京間は在来線とフル規格新幹線の併用で3時間55分かかる。フル規格の奥羽、羽越両新幹線が開通した場合、県の試算では、最短の所要時間は奥羽新幹線の山形―東京間で約2時間、新庄―東京間で約2時間半。羽越新幹線の酒田―東京間で約2時間40分と大幅に短くなる。

 山形―東京間の所要時間は山形新幹線開業から二十数年間でわずか1分短縮されただけで、ほぼ変わらない。この間、山形―東京間(360キロ)の2倍近い距離(714キロ)がある青森―東京間は1時間56分短縮されて2時間59分、約1.3倍(450キロ)の金沢―東京間は4時間8分短縮の2時間28分となった。本県から一歩出れば、時間的な距離の短縮は目まぐるしい。山形新幹線の優位性は失われつつある。

 南陽市赤湯温泉旅館協同組合代表理事の歌丸裕介さん(64)は25年前、県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部の新幹線対策委員会を担当した。「ようこそ山形新幹線開通」の文字入りはがきを作り、誘客キャンペーンを展開した。開業効果もあり、赤湯温泉も関東圏を中心に多くの観光客が訪れた。「開業前の3割増ぐらいの時期が10年ほど続いた」。だが、東北新幹線延伸や北陸新幹線開業などで「時短の恩恵が薄れ、乗り越えたはずの“時間の壁”がまた大きく立ちふさがってきた」。

 旅行形態が団体から小グループへと変わり、来訪者の交通手段は鉄道と車が同程度の割合という。「それでも新幹線はなくてはならない存在」と山形新幹線への期待は大きい。さらなる誘客を目指すためにも、山形新幹線のスピードアップは欠かせない。

 昨年3月、北海道新幹線が開業した。新函館北斗―東京間は最短4時間2分で結ばれた。新幹線での移動時間が4時間を超すと、利用客は航空機に流れやすいとされる「4時間の壁」を破ることはできなかった。

 宮城県で昨年10月に開催された北海道東北地方知事会議の席上で、北海道の高橋はるみ知事は「(北海道新幹線は)4時間の壁を破ることはできなかったが、シニア世代が乗車している状況がビッグデータ解析で分かった」と話した。直後に「ただし」と付け、「仙台との時間的な距離が近くなった。東京よりもむしろ、東北と周遊観光で連携したい」。交流人口拡大を見据え、高橋知事の視線は東北に注がれた。

 知事会議の主要テーマの一つは「活力ある地域社会の実現」だった。全国的に少子高齢化や人口減少が深刻化する中、北海道・東北地方は特に首都圏への人口流出による社会減の影響が大きい。出席した知事らは総合的な少子化対策や農林水産業、観光、スポーツ、文化の振興などで議論を重ねた。

 その中で、フル規格新幹線整備が新潟県を含めた東北、北海道の連携を促す可能性を感じさせた。富山―青森間の羽越新幹線は日本海側の大動脈となり、太平洋側との横ぐしとなる福島―秋田間の奥羽新幹線は沿線域の周遊性を加速させる役割も秘める。

 地方創生は東京一極集中の解消を目指す取り組みだが、一方で地域間競争を激化させている側面もある。県域を越えて広域的に将来像を共有し、アイデアを具現化することが真の地方創生には欠かせない。そのためにも、しっかりとした高速交通網が必要だ。(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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