克服(6)人口減少 活路は交流人口拡大~山形にフル規格新幹線を|山形新聞

山形にフル規格新幹線を

克服(6)人口減少 活路は交流人口拡大

2017/1/10 09:52
人口減少が進む本県。東京一極集中の是正、インバウンドの促進などのためフル規格新幹線が必要だ=山形市の霞城セントラル24階から

 人口減少―。2015年、国勢調査が始まった1920(大正9)年以降で初めて、日本の総人口が減少に転じた。人口が右肩上がりに増えた高度経済成長期に国民所得は上昇、同時に新幹線や高速道路などの高速交通網が急速に発達した。新幹線沿線に政令指定都市が次々と誕生した。その一方、明治初期に国内人口ベスト15にあった日本海側、四国などの都市はランク外に転落。今や東京と埼玉、千葉、神奈川の4都県で総人口の28.4%を占め、地方は少子高齢化と東京一極集中の弊害にあえいでいる。

 15年国勢調査で、日本の総人口は1億2709万4745人となった。前回10年調査と比べて0.8%減。5年間で実に96万人減少した。本県人口は15年調査で都道府県別35位の112万3891人。5年間で4万5千人減り、減少率3.9%は全国で6番目に高い。

 総人口の減少はさらに加速するとの数値がある。国立社会保障・人口問題研究所は60年の本県人口を61万人と推計する。本県人口がピークだった1950(昭和25)年の135万7千人の半分にも満たない。

 日本の国内市場は縮小し、地域経済の維持は一層困難になる。新幹線沿線の人口減少率は抑制されるとのデータもある。新幹線整備は巨額の投資を必要とする。人口減少に転じた今、フル規格の奥羽、羽越両新幹線の整備促進に向けた熱意を高めなければ、今後は実現可能性が急速にしぼんでしまう。

 県が策定した人口ビジョンは、人口減少が本県の将来に与える影響を示している。一つは生産活動と経済成長力の低下。高齢化に伴う医療、福祉、介護分野での労働力不足。地域文化や地域コミュニティーの衰退…。高齢化で交通弱者が増え、公共交通機関の必要性が高まりながらも、人口減少に伴う利用者減が経営を圧迫するという負の連鎖にはまり込む。

 課題克服の鍵になるのが交流人口の拡大だ。インバウンド(海外からの旅行)による観光振興で外国人旅行者の国内消費を喚起し、国内市場の縮小分を補完しようとの狙いがある。昨年の訪日外国人数は年間2千万人を初めて突破。政府は東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に年間4千万人の目標を掲げる。

 急伸するインバウンドだが、東北地方はその恩恵をほとんど受けていない。東日本大震災による風評被害、太平洋側に比べて脆弱(ぜいじゃく)な日本海側の社会基盤が阻害要因となっている。

 出羽三山地域や豊かな食文化が近年、注目を集めている。舞台の中心は庄内地域。閉塞(へいそく)感が漂う地方にあって、観光分野に差し込む光は、関係者の目に「地方創生の好機」と映る。欠かせないのがインフラ整備だ。県庄内地区羽越新幹線整備実現同盟会の会長、榎本政規鶴岡市長は「(羽越新幹線の実現は)成し遂げなければならない課題」と言い切る。

 安倍晋三首相は昨年9月の所信表明演説で、地方創生について言及した。「整備新幹線の建設も加速し、東京と大阪を大きなハブとしながら、全国を一つの経済圏に統合する『地方創生回廊』を整えます。それぞれの地方が自らのアイデアで、自らの未来を切り開く。自治体による地方創生への挑戦を、新しい交付金によって応援します」

 鉄道は大量輸送を可能にする。安全で、高速で、運休・遅延リスクの少ない新幹線は、国内移動を加速させる。日本海側を縦走する羽越新幹線は東京、大阪につながる路線であり、奥羽新幹線は太平洋側と日本海側を格子状に結ぶ。両新幹線は東日本大震災を教訓とする代替機能強化の観点からも重要な路線だ。実現なしに「地方創生回廊」は生まれない。国土は人が住んで初めて保全される。大都市重視、太平洋側偏重の視点では、未来を切り開くことができない。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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