山形にフル規格新幹線を

克服(7)企業誘致 先行「北陸」に雇用効果

2017年01月11日
フル規格新幹線は企業誘致にも大きな役割を果たす。写真は上山市の蔵王の森工業団地
フル規格新幹線は企業誘致にも大きな役割を果たす。写真は上山市の蔵王の森工業団地
 若者の県外流出が進み、Uターンや定住の促進、移住の受け入れが喫緊の県政課題となっている。そのためには働く場所の確保が欠かせず、地方創生を語る上でも重要なポイントといえるだろう。フル規格による奥羽、羽越両新幹線の整備が安定雇用の創出につながることを、2015年に開業した北陸新幹線の例が示唆している。

 北陸新幹線のルートは東京を起点に長野、上越、富山、金沢、福井などの北陸主要都市を経由し、大阪に至る。3時間台だった東京―富山間、東京―金沢間、東京―福井間がいずれも2時間台で結ばれた。

 北陸経済研究所(富山市)がまとめたビジネス面への新幹線効果によると、ファスナー大手のYKK(東京)が本社人員を主力工場がある富山県黒部市に移したほか、建設機械大手のコマツ(東京)も本社機能の一部を石川県小松市に移転した。

 航空機部品や医療機器などを手掛ける日機装(同)は、静岡県内の製造拠点を金沢市内の工業団地に移して操業を開始した。ユースキン製薬(川崎市)は富山市内の工業団地に新工場を建設し、横浜市の生産機能を全て移した。

 これらの動きは氷山の一角で、本社機能移転から工場進出、他圏域企業とのコラボレーション、業務提携といった企業活動が相次いだ。富山県だけでも開業後1年間の経済効果は産業面が約267億円、観光面が154億円の総額421億円に上ると試算されている。

 同研究所調査研究部の藤沢和弘担当部長は、フル規格新幹線を「地域が生き残るためのインフラであり、地域発展の必要条件」とした上で、十分条件として▽その地域でしかできないもの▽地域の強みを活用し弱みを克服するもの―といった「地域戦略」を構築することが重要だと指摘する。

 昨年12月17日、山形新聞と山形放送が提唱し、都内で開いた「21世紀山形県民会議」。アドバイザーとして参加した北陸経済研究所の藤沢和弘調査研究部担当部長は「(北陸新幹線の開業で)工場だけでなく、本社ごと日本海側に進出する企業もある。交流人口の拡大、企業進出などを考えれば、山形に鉄道と道路、港、空港を整備することが重要になる」と語り、フル規格の奥羽、羽越両新幹線を含めたインフラ整備が本県の企業誘致を後押しするとの考えを示した。

 藤沢氏は、日本海側への企業進出の背景には、災害などを想定した地政学的な転換もあると指摘する。

 静岡県の製造拠点を金沢市内の工業団地に移転した日機装は、東海地震など自然災害発生時のリスク分散を見据え、日本海側への移転を決めたという。藤沢氏は「日本海側が『裏日本』とされたのは明治以降で、その前は『表日本』だった」とし、新幹線が日本海側を再び表日本に転換させ得ると強調した。

 山形新幹線の沿線自治体の一つ、上山市は市内に▽上山▽蔵王の森▽新北浦▽蔵王フロンティア―の4工業団地を抱える。近年は、東北中央自動車道の整備が進展していることなどを背景に企業集積が進んできている。

 道路が主に物流の中心を担うのに対し、新幹線は多くの人を安定的に、短時間で運ぶ。高速交通網で道路と新幹線は「どちらか」ではなく、「どちらも」そろうことで、最大限の効果を発揮することができる。企業誘致でも同様だ。

 上山市企業誘致推進室はフル規格新幹線が整備された場合、「雇用確保の観点では、工業団地に工場や物流施設の立地を進めた従来型の企業誘致から一歩進める必要がある」とする。大企業の本社機能移転を含め雇用の核となる企業を誘致し、若者がUターンしやすい環境を整えることが重要になる。

 政府は企業の本社機能移転を地方創生の目玉政策に位置付け、2015年度に企業の地方移転促進税制を導入したが、全国的には本社機能の地方移転の流れが軌道に乗ったとは言い難い。企業が本気で地方に目を向けるためには、税制だけではなく、高速交通網とりわけフル規格新幹線が重要であることを北陸の例は明示している。(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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