やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第5部・結ぶ[8] 最上地域の連携

2014/6/6 16:00
新緑を楽しむイベントでブナ林を散策する参加者。もがみ観光博は本年度、「ブナと巨木のもがみ回廊」をテーマに事業を展開する=舟形町

 新庄最上地域全体を博覧会場に見立てた「もがみ観光博」。8市町村や県、観光協会、商工会議所・商工会、旅館組合、JA、民間事業者で構成する最上地域観光協議会が主催し、2012年度に始まった。「最上はひとつ」の考え方の下、夏から秋にかけて観光資源の集中的な宣伝、誘客を展開している。

 初年度は管内で行われていた120のイベントを温泉、食・農、伝統などテーマごとに整理し、新たに制作したパンフレットやホームページ(HP)で情報を発信。2年目は、温泉や鳥モツなどの郷土料理、新庄まつりに代表される伝統文化、巨木群といった地域資源を網羅してパンフのページ数を倍増、HPも充実させ、最上の魅力を一体的にPRした。8市町村で宝を探す「最上八宝伝」も実施し、延べ1万4千人が参加。課題だった地域内の周遊性を向上させた。

 一方で宿泊などの波及効果を疑問視する声も上がっていた。観光博中のイベントへの観光客数は、12年度(7~11月)が計87万8千人で東日本大震災の影響の大きかった11年度同期より17%増えた。ただ、13年度(6~11月)は12年度同期比2%の増加にとどまった。事業の効果があったとは言いにくい。

 それでも一つの「成果」が表れつつある。各団体が観光博という同じ看板を掲げ、行動する中で、売りやターゲットが明確になってきたことだ。「最大の資源は豊かな自然。売り込むべきは都会」。観光博の事務局を置く県最上総合支庁観光振興室の佐藤諭室長(55)は言い切る。14年度は「ブナと巨木のもがみ回廊」をテーマに、地域内の資源をつなぐ取り組みが始まっている。

 県の統計によると、新庄最上地域への観光客は年間226万人(2012年度)で、本県への観光客総数の6%。県内4地域で最も少ない。しかし、巨木をはじめとする自然の豊かさなら負けていないはずだ。「都会に大自然を売る」との方針が明確になると、やるべきことが見えてきた。

■ファンをつかむ

樹齢1200年以上といわれる「角川の大スギ(長倉の大杉)」。新庄最上地域は、こうした巨木を生かし、他の地域がまねのできないトレッキングコースを提案している=戸沢村

 最上地域観光協議会は、13年度後半から登山やトレッキングのファンをつかむ旅行会社、専門誌編集部を訪問し、売り込みを開始。十数年前の巨木ブームを継続的な観光客の取り込みにつなげられなかった反省から、人気が続くトレッキングと巨木を組み合わせる工夫も加えた。

 象徴的な事業として、登山家・田部井淳子さんと行くトレッキングツアーの企画にこぎ着けた。6月10、11日と10月、来年3月に予定。真室川町の「女甑山(めこしきやま)の大カツラ」など、最上ならではの巨木と深い森を生かしたコースを設定できた。

 このほか▽杢蔵山に咲く高山植物・ヤマルリトラノオを探す旅(新庄市)▽肘折山伏と「聖地」を巡る旅(大蔵村)▽伝承野菜・甚五右エ門芋の植え付けと郷土食を楽しむ旅(真室川町)―など、地域資源を前面に出したツアーを6月だけで約10本計画した。

 いずれのツアーも住民らが案内役を務める。もがみ地域観光ボランティアガイド協議会への加盟者は15団体約360人に上る。巨木や自然だけでなく、民話や松尾芭蕉のおくの細道、里山の暮らし、まち並みなど、多様な知識を持つガイドだ。「地域の歴史、風土も伝えられる住民がいるからこそ、ツアーの付加価値を高められる」と佐藤諭県最上総合支庁観光振興室長(55)。

■HPも大幅刷新

 最上地域観光協議会のホームページも大幅にリニューアルした。トレッキングは登り口の写真を、滝めぐりでは「1人で行ける」から「案内が必要」といった難易度を付けた。このほか体験、温泉、宿泊、食、土産、おくの細道、紅葉めぐりなどのジャンル別に魅力を紹介。ブナと巨木を入り口に、ほかの観光資源の周遊にもつなげたい考えだ。

 人材も確保した。13年度までにパンフレットやホームページにまとめた8市町村の資源と魅力も「大手旅行会社に十分売り込めたか、課題が残った」(大類好一新庄観光協会事務局長)からだ。旅行商品の開発と合わせて旅行会社への売り込みを強化するため、旅行・バス会社で長く観光事業に携わってきたプロを1人、協議会で雇用した。

 「方向性が決まり、人材も手当てした。必ず成果につながるはず。全国と戦える地域だと意識を持つことが大切だ」。もがみ観光博実行委員長の鈴木富士雄最上峡芭蕉ライン観光社長(63)は言った。

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