やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第6部・アウトドアツーリズム[5] モンベルとの連携[上]

2014/7/27 18:39
モンベル会員らが大勢訪れたフェア会場。月山の雪を使い、本県の魅力をアピールした=6月7日、仙台市・夢メッセみやぎ

 仙台市の夢メッセみやぎで6月に行われたアウトドアフェア。多くの家族連れが詰め掛ける会場の一角に、月山の雪が用意された。季節外れの雪に喜ぶ親子に、本県観光関係者が声を掛ける。「月山でなら7月まで夏スキーができますよ」。パンフレットを読み込む父親の姿もあった。

 フェアはアウトドア用品国内最大手のモンベル(大阪市)が主催。年5回、東京と大阪、仙台で開催される。出展できるのは同社の「フレンドエリア」や会員を支援する団体。6月のフェアには、本県から「月山・朝日・飯豊・蔵王」が参加。行き先を探している人に、直接情報を届けた。

 モンベルは国内50万人の会員を持つ。フレンドエリアは、魅力的なフィールドがあり、地域全体で会員を支えてもらえるエリアとして同社が指定。会員向けに50万部発行する特典ガイド(年2回)に地域情報が掲載され、会報誌(年4回)で特集されることもある。会員はエリア内で自然学校や体験施設のほか、宿泊・飲食施設でも割引や特典を受けられるため、その地域は行き先選びで優位になる。全国に37カ所(24日現在)あり、県内では月山・朝日・飯豊・蔵王と「鳥海山」の2カ所だ。

 会報誌などに県内情報が掲載されると、反応がダイレクトに分かるという。11年秋冬の商品カタログの表紙に蔵王の樹氷が、13年秋の会報誌に蔵王のトレッキング特集が掲載されると、モンベル会員の来訪が急増した。「同社の媒体を活用した情報発信の反響は大きい」。山形市蔵王温泉で宿泊・飲食施設ろばたを経営する志田繁智蔵王温泉観光協会観光企画委員長(54)は手応えを語る。

 モンベルの支援を受けたアウトドアイベントの開催が可能になることもエリアのメリットだ。県内では「鳥海山」が指定された2011年以降「鳥海山SEA TO SUMMIT(シー・トゥー・サミット)」が毎年秋に行われている。地元実行委員会が主催し、カヤック、自転車、登山で海から鳥海山を目指す大会。全国の愛好家が参加し、雄大な自然の魅力を広めるきっかけになっている。

 今月18日、山形市や西川町、飯豊町などの自治体と蔵王山岳インストラクター協会などの代表者約10人が、山形市内で“作戦会議”を開いた。アウトドア用品大手のモンベルのフレンドエリア「月山・朝日・飯豊・蔵王」を支える面々だ。テーマは、10月上旬にオープン予定のモンベル山形店(山形市幸町)をいかに活用し、県内にアウトドア愛好家を呼び込むか。開店を約2カ月後に控え、県内の動きが活発になってきた。

モンベル山形店のオープンを機に、アウトドア資源を生かした誘客につなげようと意見を交換する県内観光関係者=山形市役所

■バスの待機所も

 山形店は、売り場面積が仙台店(仙台市青葉区)の約2倍で東北最大級。全国のモンベル店舗で初めて、駐車場内にバスの待機スペースを設ける予定だ。土地と建物を所有するヤマコー(山形市)との連携で実現した。JR山形駅から徒歩約5分と近いため、首都圏などから山形駅まではJRで移動し、山形店から貸し切りなどのバスで県内各地へ出発できるようになる。

 この店を「単なる店舗ではなく、登山、トレッキングの拠点にしたい」と多くの関係者が口にする。モンベル創業者の辰野勇会長(66)もその一人。世界の自然を見てきた辰野会長の目に本県は「アウトドアの楽園のような場所」に映った。「蔵王、飯豊、月山、鳥海山と挙げれば切りがないほど山のフィールドが特にいい。さらに川も海もある。ここを中心に山形の素晴らしい自然環境を楽しめる仕組みをつくり、情報発信基地にしたい」。4月に行われた地鎮祭で辰野会長は熱っぽく語った。

■ガイド確保課題

 県内の山の楽しみ方の一つに朝日、飯豊連峰などの縦走がある。ただ、登り口と下り口が異なるため、登山口への路線バスがないというアクセスの悪さが、通常の登山以上にネックになっていた。店舗を拠点に登山者を送迎すれば、利便性は格段にアップする。作戦会議でも「縦走プランは目玉になり得る」「仙台をターゲットにしてはどうか」などの意見が出された。秋に1、2本のツアーを実施したい考えだ。

 課題はガイドの確保。「地域を熟知し、愛好家を遊ばせてくれる人がいるのといないのとでは、参加のしやすさ、満足度が全く違う。いかに確保できるかにかかっている」。モンベルとの多様な連携の窓口を務める青木哲志山形市観光物産課長補佐(52)は言った。

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