ナスカの伝言

第4部(2) 無数の直線“道”の可能性

2013年09月08日
足元のラインセンターから延びる直線の地上絵を示す渡辺洋一教授=ペルー
足元のラインセンターから延びる直線の地上絵を示す渡辺洋一教授=ペルー (クリックで拡大表示します)
 ナスカ台地を上空から眺めると、無数の直線が目に飛び込んでくる。山形大の研究チームが注目するのは、これら直線の地上絵が集まる「ラインセンター」と、ラインセンター同士を結ぶ直線の存在だ。

■集落に向かう
 同大人文学部教授の渡辺洋一(認知心理学)は空間認知の観点から「古代の人々が台地を移動するためのナビゲーションの役割を果たした可能性がある」と指摘する。ナスカの伝言~解明に挑む山形大 第4部(1) 同じく人文学部教授の本多薫(情報科学)は衛星画像の分析と現地調査によって直線が台地の東西と南北を結んでいたことを突き止め、「人が移動し、情報を伝達するためのネットワークだったのではないか」と考えている。

 ナスカ台地を縦断するパンアメリカンハイウエーのすぐ脇に「ナチュラルミラドール(自然の展望台)」と呼ばれる小高い丘がある。頂上に立つと、約10本の直線が丘から台地の端や中央に向かって延びるのが分かる。この丘もラインセンターの一つ。ペルー文化省ナスカ支局のマリオ・オラエチェア支局長によると、直線のいくつかは現在の、またはかつての集落に向かっているという。

 山大の調査によると、台地上のラインセンターは130以上。ラインセンターは山や丘のほか、土石を盛ったマウンドや石積みだったりする。マウンドや石積みは遠方からの確認が難しそうだが、広大な台地ではわずかな起伏も目標になる。さらに直線をたどれば見つけることはよりたやすい。

直線の地上絵によるナスカ台地のネットワーク図(上が北)。東西と南北が結ばれることが分かる。台地の端には居住地や祭祀センターがあった(本多薫教授提供)
直線の地上絵によるナスカ台地のネットワーク図(上が北)。東西と南北が結ばれることが分かる。台地の端には居住地や祭祀センターがあった(本多薫教授提供)
 ナスカ期の人々は、地上絵を描くなど目的を持って居住地から広大な台地に登り、そして台地の下に帰って行った。丘の上から周囲を見渡した渡辺は「夜空を星座で分けることで『安定したもの』として捉えることができるように、台地を分けたり、集まりとして捉えたりする基準としてラインセンターが存在したのではないか。台地上の自分の位置を把握することもできたはずだ」と語った。

■ネットワーク構造
 一方、本多は情報科学におけるネットワーク構造の安定性、効率性、信頼性の視点からラインセンターと直線の地上絵の分布、その関係を検討している。点と線で表現されるネットワーク構造で重要なのは、スタートからゴールまでの移動距離(効率性)、複数経路の存在(安定性)、点と線の無故障(信頼性)などだ。

 本多によると、ナスカ台地には▽重要なラインセンターが存在する(安定性)▽東西を結ぶラインがあり、南北をつなぐ経路も複数ある(同)▽重要なラインセンター間の距離が近似している(効率性)▽重要なラインセンターは環境の影響が小さく、視認性が高い山など自然物である(信頼性)-といったネットワーク構造の特徴が見られる。

 本多らはこれまでの現地調査で、実際に直線を歩く実験も行い、心拍を計測。無理なく歩けることを確認している。本多は「全ての直線を『道』として解釈することは無理がある」としながらも、「文字を持たない人々は、情報や物を交換するために会う必要があったのではないのか。台地に刻まれた直線はそのための『道』だったのかもしれない」と地上絵のネットワーク図を見詰めた。
=敬称略
(報道部・鈴木悟)
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