やまがた農新時代

第2部・冬と雪(7) 燃料高(下)

2014年03月22日
地下水利用ヒートポンプの設備を確認する沖津嘉宏社長。冬でも地下水温は14度ほどで一定している=寒河江市高屋
地下水利用ヒートポンプの設備を確認する沖津嘉宏社長。冬でも地下水温は14度ほどで一定している=寒河江市高屋
 高騰する燃料代を抑えるため、県内の花の栽培施設でヒートポンプの導入が広がっている。夏場は冷房として使え、コスト削減だけでなく、地球温暖化抑制の効果がある。ヒートポンプは空気熱を利用するのが一般的だが、水温がほぼ一定でエネルギー利用効率がより高く、生産性向上につながると期待されているのが地下水熱の利用だ。

■ヒートポンプ
 県は庄内総合支庁産地研究室で3年間、地下水利用のヒートポンプシステムの実証実験を行い、暖房経費はエアコンと比べ半分程度、灯油との比較では約3割に抑えることができた。冷房でも経費はエアコンの8割という結果を得た。

 県内の実用化第1弾として、寒河江市のオキツローズナーセリーが昨年12月、同市と河北町にあるバラ農場3カ所に地下水利用のヒートポンプシステムを整備し、ハウス計12棟(計約1・7ヘクタール)を暖めている。沖津嘉宏社長(59)は2007年の原油高騰を受け、省エネ策を検討してきた。「円高傾向が顕著になり、輸入燃料代の上昇が続いているため導入に踏み切った」

 バラにとって適温は日中が25、26度で、夜間は18度程度に保つ必要がある。これまで夏場はクーラー、冬場はクーラーの排熱と石油暖房機を利用してきた。病気の原因になる湿気を飛ばすために、冬季間だけでなく5月中下旬まで暖房を使う。年間の重油・灯油代は2200万円、電気代は1500万円だった。

■高い暖房効率
 導入から3カ月、沖津社長は「省エネに非常に効果がある」と手応えを感じている。空気熱利用のヒートポンプは、気温と必要な温度の差が大きくなると、効率は下がる。そのため冬は石油暖房機と併用されることが多い。一方で地下水は年間を通して水温がほぼ一定しており、効率が高い。3月上旬に寒河江市高屋のハウスを訪ねた際の外気温は1度、くみ上げられた地下水温は14・2度だった。霜取り運転がない点も利点という。

 今冬は、氷点下12度ほどまで冷え込んだ2日間だけ石油暖房機を動かしたが、重油・灯油の使用量は70リットル程度。沖津社長は「よほど寒くならない限り、ヒートポンプシステムの暖房だけで十分。年間の燃料代・電気代は合わせても2500万円程度に抑えられそうだ」と見通す。

 暖房効率を上げるため、ハウスのビニールを2重にしたり、エアカーテンを設置したりといった工夫をしてきた。雪が降らない地域と比べて、燃料代がかかり、日照量が少ないという不利な条件でも収量を上げるために、10年以上前からハウス内に二酸化炭素を発生させバラの成長を促す取り組みを行っている。現在は約70種類のバラを栽培し、全国に年間250万本を出荷している。

■サポート必要
 地下水利用ヒートポンプの普及に向けた課題は導入コスト。12棟への設置の事業費は約6千万円だった。同社は県の戦略的園芸産地拡大推進事業の補助を受けたが、事業主負担は約3千万円に上った。十分な量の地下水が確保できるかも重要なポイントになる。

 沖津社長は「地下水利用のヒートポンプは燃料代だけでなく、地球温暖化防止にも貢献している。多くの農業者が取り組めるようなサポートが必要」と強調する。県農業技術環境課は「導入メリットが大きいのは花など年間を通して暖房、冷房を使う作物だが、多くの燃料が必要な秋冬の野菜栽培でも効果が期待できる。普及を後押ししていきたい」としている。

(「やまがた農新時代」取材班)
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