やまがた農新時代

第2部・冬と雪(8) 利雪(上)

2014年03月23日
雪の中でうま味を増した「雪菜」を収穫する佐藤了さん。米沢の冬の特産野菜を生産者仲間と協力しながら守っている=1月、米沢市笹野町
雪の中でうま味を増した「雪菜」を収穫する佐藤了さん。米沢の冬の特産野菜を生産者仲間と協力しながら守っている=1月、米沢市笹野町
 米沢市南西部の上長井地区で代々守られ、育てられてきた「雪菜」。厳寒の時期に、山麓を覆う雪の中でうま味を増し、旬を迎える米沢の冬ならではの特産野菜だ。上長井雪菜生産組合長を務める佐藤了さん(66)=同市笹野町=は「作り続けるのは簡単ではないが、地域の宝をなくすわけにはいかない」と、今シーズンの収穫を終えた雪原を見ながら語った。

 雪菜は、その名の通り雪の中で育つ軟白野菜。江戸時代に藩主上杉家が米沢に入る時に持ち込んで栽培を奨励し、盛んに作られた「遠山かぶ」の「とう」と呼ばれる花茎をルーツとしている。栽培を続けるうちに「長岡菜」などと自然交雑したものの中から、優れた「とう」を選抜しながら育成し“米沢育ち”の現在の姿になった。

■手間暇かけて
 毎年8月下旬から9月初旬に種まきし、11月中旬ごろに根を付けたまま一度収穫。雪が降る前の11月下旬から12月上旬までに12、13株を一束にしてわらで囲い、土を盛る「床寄せ」を行って雪を待つ。畑が1・6~1・8メートルの雪で覆われると、室温約1度、湿度約100%の天然の雪室で成長を続け、本物の雪菜になる。

 「豪雪地という厳しい環境と時間、それに手間をかけて育てているのが雪菜なんです」と佐藤さん。厳冬期に身長にも達するような雪の中から丁寧に掘り出し収穫するが、商品になるのは中心部だけで、実際の収穫量は床寄せ時の3分の1程度にしかならない。

 雪の中で育つという特徴と雪菜のネーミングが相まって、米沢の冬の名物として注目される。しかし、生産量の確保や売り上げの伸び悩みなど課題が山積する。

■食べ方をPR
 同組合の生産量は、JAへの出荷を中心に、ここ数年約12トンで横ばい状態という。価格も1キロ500円前後で推移。今のところ需要と供給のバランスは取れているものの、佐藤さんは現状に危機感を募らせている。「今はいい。でも今後、生産量の増加や食べ方の紹介を含めてもっとアピールしなければ、衰退しかねない」

 佐藤さんが危惧するのは生産者の減少と高齢化だ。1982(昭和57)年に組合が発足し、当初は20軒ほどで雪菜を作り続けてきたが、現在は半分の10軒にまで減少。さらに生産者の平均年齢は60代後半で後継者育成が進まない。「農業は多角的な経営が必要。雪菜は冬場の貴重な収入源になっているんだが、なかなか若い人が出てこない」と不安を打ち明ける。

 もう一つの悩みは、雪菜の食べ方のバリエーション不足。5年前、佐藤さんたちは東京のレストランなどに雪菜を送り試食してもらった。しかし、葉物野菜としてゆでただけで味わわれ、「苦いだけ」と酷評されてしまったという。「食べ方を紹介しなかったばかりに、せっかくのチャンスを逃した」と悔やむ。

 その経験から佐藤さんたち生産者は、食べ方のPRにも力を入れるようになった。市やJAの協力を得ながら、独特の辛味が特徴の伝統の「ふすべ漬け」をはじめ、鶴岡市のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフの奥田政行さんやテレビの料理番組などで活躍する料理研究家小川聖子さんらが考えた「雪菜レシピ」を記載したチラシやパンフレットを作り、消費者にアピールを続けている。

■作り手の意識
 「雪菜は米沢の大地と雪の中で先人たちが作り上げてくれたもの。守っていくには現状維持だけでは難しい。作り手として、努力し続ける意識を共有することが不可欠なんです」と、佐藤さんは自らに言い聞かせるように語った。

(「やまがた農新時代」取材班)
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