やまがた農新時代

第2部・冬と雪(9) 利雪(下)

2014年03月24日
雪が積もった畑で収穫する「雪中!自然薯掘りツアー」。雪を克服し、活用してブランド化を進めてきた=1日、大石田町豊田
雪が積もった畑で収穫する「雪中!自然薯掘りツアー」。雪を克服し、活用してブランド化を進めてきた=1日、大石田町豊田
 3月下旬になっても1メートル以上の雪が残る大石田町。県内外から多くの参加者が集い、今月初めに開かれた「雪中!自然薯(じねんじょ)掘りツアー」に、福島県いわき市の農家グループの姿があった。その一人は「雪国のハンディを乗り越え、先駆的な取り組みをしている」と、大石田に視察に訪れた理由を語る。町内外で知名度が高まる「大石田自然薯」。産地として定着するまでには12年間、雪を克服し、活用し、生かす、まさに雪と共に歩んだ歴史があった。

■独自の栽培方式
 自然薯は日本原産種で粘りが強く、滋養強壮に効果があるとされる。生産に取り組むのは大石田町新作物開発研究会。降雪期の出稼ぎに悩む男たちが「通年出荷できる農作物を見つけ、苦労を解消したい」と1982(昭和57)年に発足させた団体だ。ワサビやタラノメ栽培が思うように進まぬ中、町内に自生し、古くから食されてきた作物に目を付けた。「高齢者でも無理なく栽培でき、単価も高い。探し求めていた作物は身近にあった」と会長の海藤明さん(66)=同町横山=は振り返る。

 2002年、町内の畑の一角で挑戦は始まった。地中で縦に成長するため掘り出すのに苦労し、収量が上がらない課題は、浅い地中にパイプ状の栽培シートを敷き、横に成長させる方法を開発して克服。畑に入れない冬にハウス内で植え付けの準備を進め、雪解け後すぐに作業できるようにもした。先進地に視察を重ねて試行錯誤を繰り返し「大石田方式」の栽培を確立。活動は軌道に乗ったように見えたが、間もなく通年出荷という壁にぶつかった。

■課題は貯蔵方法
 収穫期は本来、11月~翌年3月。しかし豪雪地のため、本格的な積雪前の11~12月と、4月中旬からの融雪後のわずかな期間しか作業できない。さらに保存が難しく、夏から秋にかけての注文に応じることができずにいた。貯蔵方法を探る中、力を貸してくれたのが、長年悩まされてきた雪を活用した雪室だった。09年、県の協力を得て新庄市の県最上総合支庁産地研究室の雪室施設で長期貯蔵実験を開始。2年かけて洗い方など前処理を工夫することで、保存に成功、次年子地区にある雪室から通年出荷が可能になった。海藤さんは「雪室の低温高湿度で食味も増した。長年の研究で蓄積された県のノウハウが、付加価値をより高めてくれた」と感謝する。

 県産業技術振興機構のやまがた産業夢未来基金(現・地域産業応援基金)の助成を受けて生産態勢を拡大、今や年間約2万本を植え付け、約400万円の利益を見込むまでになった。やまがた農業支援センターの事業を活用し、粉末化による麺や菓子への6次産業化も進めている。厚いサポートを受け成長してきたが、海藤さんはあえて県に販路拡大で厳しく注文する。「市場に出荷するだけでは未来は開けない。他の農作物も同じ。売れる作物になってこそ、より良いものを作ろうという意欲が生まれる。県も努力しているが、今以上に積極的にPRを展開し、山形の農作物の知名度を高めブランド化を推進してほしい」

■厄介者を味方に
 12年かけて築いてきた大石田自然薯のブランド。町に視察に来た朱亀寿美朗(しゅがめ・すみお)東京シティ青果開発部長は「今の食に求められるのは満腹ではなく『満足』。栄養機能が優れている自然薯は、健康というキーワードにマッチし、需要が見込める。そこに『雪国育ち・雪室による熟成』という付加価値が加わり、魅力はより深まる」と可能性を説明する。

 「自然薯の産地は太平洋側が中心。栽培を進める過程で確かに雪はネックだった。しかし、雪に負けまいと努力する中で、独自の技術や取り組みを生み出すことができた」と海藤さん。厄介者の雪は今や強い味方。雪がなければ、大石田の自然薯はなかったのかもしれない。

(「やまがた農新時代」取材班)=第2部おわり
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