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やまがた農新時代

第3部・スタート(3) 増える雇用就農

2014/5/21 11:05
「改善できる点がないか、自分で考えながら仕事をしたい」と語る遠藤辰人さん=山辺町北山・山形ピッグファーム松山農場

 新規就農者の中でも農業法人などに就職する「雇用就農」が県内で増えている。2008年度は163人中12人だったが、13年度は251人中83人と33%を占めた。遠藤辰人さん(29)=山辺町山辺=は、町内産の飼料用米を与えた「舞米豚」を肥育している企業「山形ピッグファーム」(同町)で働いて間もなく丸4年。任される仕事も増え、やりがいと責任を感じながら豚と向き合う毎日を送る。

■安定した仕事

 北海道の酪農学園大を卒業し、県内の牧場や書店で働いた。交際していた妻(29)との結婚も考えるようになり、好きな畜産・酪農分野でかつ安定した正社員の仕事を探していた。10年春、山形ピッグファームの求人が目に留まり、応募を決めた。

 遠藤さんの職場の松山農場は同町北部の山中にある。豚舎は、人工授精で交配させた母豚を管理する繁殖舎、子豚が生まれる分娩(ぶんべん)舎、親離れさせる離乳舎、出荷まで育てる肥育舎などに分かれている。これまで主に肥育と離乳の業務を担当していたが、この春から全てに携わるようになった。

■覚悟を持って

 5月中旬、農場を訪ねた。置賜や庄内で発生した豚流行性下痢(PED)は沈静化していたものの、原則、関係者以外立ち入り禁止の厳戒態勢が敷かれていた。事務所でシャワーを浴び、新しい下着と作業服に着替え、遠藤さんと離乳舎を回った。生まれて1カ月ほどの子豚たちが餌を食(は)んでいる。「豚は非常に繊細な動物。汗がかけないので、豚舎の温度管理に気を使う」。様子を確認しながら教えてくれた。

 この日は午前5時前に起き、同6時に出社した。午前中は人工授精や餌やりなどを終えた。仕事は午後5時までだが、停電が発生すれば深夜でも農場に駆け付け、懐中電灯を片手に豚舎を見回る。重労働にも「もともと動物に関わる仕事を希望して覚悟を持って入ってきたので、つらいとは思わない」と額に汗を光らせ言い切る。舞米豚など同社の豚肉を食べた人からの「おいしかった」との声も励みになっている。

■採用しやすく

 同社は国の「農の雇用事業」を利用し、若い社員を随時採用している。45歳未満の新規採用従業員への研修費用(年間最大120万円)が助成される事業で、阿部秀顕(ひであき)社長(43)は「余裕がなく、なかなか手が回らなかった若い人材の採用と育成をしやすくなった」と話す。

 事業の窓口である県農業会議によると、09~13年度に県内の法人で農の雇用事業を使い研修を受けたのは計463人。研修終了後も法人で働き続けた割合は73・6%だった。五十嵐淳農地・経営課長は「新規就農者の増加、定着に一定の成果が出ている」とする。山形ピッグファームでは4人が研修中で、阿部社長は「大変な仕事だが、意欲と自主性がある若い人材に入ってきてほしい」と語る。

 遠藤さんについて阿部社長は「非常に真面目で、一生懸命頑張ってくれている。将来、会社を引っ張る人材になってもらいたい」と期待を寄せる。遠藤さんは「先輩たちに教わりながら、いかに死んでしまう豚を減らせるか、いかに早く大きくして出荷できるかなどを自分でしっかりと考え仕事をしていきたい」と意欲を口にした。

(「やまがた農新時代」取材班)

農の雇用事業 45歳未満の新規就農者を雇った農業法人に対し、生産技術や経営ノウハウなどの研修費用を助成する。研修は2009年度に始まり、交付額は1人につき、年間最大120万円(2年以内)。14年度からは就農希望者を一定期間雇用し、新たに農業法人として独立させるために実施する研修を支援する「法人独立支援タイプ」が新設された。交付は4年以内で年間最大120万円、3年目以降は最大60万円。県は45歳以上を雇った法人に研修費用を交付する独自事業を行っている。

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