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やまがた農新時代

第3部・スタート(7) この地に魅せられ移住

2014/5/25 10:18
二人三脚でナス栽培に取り組む岡部洋介さん、優子さん夫妻=寒河江市寒河江

 県民にとっては何げなく目にする景色や口にする食べ物に価値を見いだし、県外から移住する農業研修生は少なくない。理想の農業経営を追い求める研修生たちは学び、悩みを繰り返しながら今日も農地で汗を流す。

■複合経営選ぶ

 寒河江市寒河江の住宅地に程近い畑。岡部洋介さん(34)優子さん(32)夫婦が二人三脚でナス栽培に取り組む。2人は、就農前の研修生を対象にした国の青年就農給付金(準備型)を受ける。年間150万円をそれぞれ得ながら研修先で農業のいろはを学ぶ。

 昨年2月、千葉県船橋市から優子さんの実家がある寒河江市に移り住んだ。大阪生まれで千葉育ちの洋介さんは、都内の物流会社に勤務していた。「一生この会社で働き続けられるだろうか」。漠然とした不安を打ち消したのは、何度か目にした山形の自然、田園風景だった。農業を志す決意を固め、優子さんに相談。2人で生きていく理想的な農業経営として複数の農作物を手掛ける複合経営を選択。寒河江市でコメやサクランボ、リンゴなどを手掛ける土屋喜久夫さん(60)の下で昨年4月から研修生として作業を手伝う。

■方言には苦労

サクランボの摘果作業に当たる糸金多朗さん=天童市荒谷

 研修当初、洋介さんに立ちはだかったのが言葉の壁。「いろいろ指導してもらう中で方言が理解できず、苦労した。1年たって、ようやく分かってきた」と苦笑する。コミュニケーションがうまく取れず、孤立感を募らせた結果、道半ばで断念するケースはたやすく想像できる。洋介さんは「畑で作業をしていると通り掛かりの農家の人がよく声を掛けてくれた」、優子さんも「周りの人たちがよくアドバイスをくれた。それがなければ続けられたかな」と口をそろえる。

 岡部夫妻に任せられているナスの定植作業は昨年、研修先が人手を調達したが、今年は2人が知り合いに声掛けし、協力を得て無事終えた。土屋さんは「農家は互いに助け合うことが大事。1年前の2人とは全然違う」と目を細める。

■驚くおいしさ

 「山形のサクランボのおいしさに驚かされたのが始まり。いつか自分で育てたい、との思いがだんだん膨らんでいった」。天童市で果樹の生産、加工、販売を手掛けるオーチャードタケダ(武田高勇社長)で研修を積む糸金多朗さん(37)はそう振り返る。出身地の札幌市でサラリーマンをしていたが、妻の実家が天童市にある縁で、以前から興味があった農業の世界に飛び込んだ。

 手始めに、新規就農を考える人たちをサポートするやまがた農業支援センター(山形市)に相談。「6次産業化を目指したい」という糸金さんの意向に沿って、昨年4月から同社に通う。妻と子ども3人、義父との6人暮らし。「今は将来への投資」と前を見据える。来年4月の独立に向け、農地確保など不安はある。だが「周りのサポートに感謝しながら、ずっと勉強しなくてはいけない」との覚悟はできている。

(「やまがた農新時代」取材班)

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