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第3部・スタート(8) 農業法人で研修

2014/5/26 10:02
農業にやりがいを感じている高井隆太さん(左)。アスパラガス畑で後藤隆英社長のアドバイスを受ける=飯豊町萩生

 飯豊町のいいでどんでん平ゆり園近くに広がるアスパラガス畑。次の収穫に向け、地中の株に養分を蓄えるために伸ばした茎が立ち並んでいる。5月下旬、高井隆太さん(25)=長井市白兎=は茎の倒伏を防ぐネットやひもの張り具合を確認していた。後藤農場(同町萩生)に入社し9カ月。「農業の仕事にやりがいを感じている。いろいろな知識を身に付けたい」と日焼けした顔を上げた。

 約3ヘクタールでコメを作る兼業農家の出身。農作業を手伝うことはあったが、農業を仕事にするとは考えなかった。高校卒業後、仙台市の専門学校で建築を学んだ。地元の建築関係の会社で働きながら設計士になることを夢見たが、希望の職はなく、工場などで短期の仕事をしながら生活していた。

■日々違う仕事

 就農のきっかけは、父親がアスパラガス栽培を始めたことだった。ちょうど就職活動をしていた時期で、求人を出していた後藤農場がアスパラガスを栽培していると知った。「技術と知識を身に付けて父親に教えてあげられるかもしれないと思った」

 後藤農場は鉢物の花や花壇苗、アスパラガス、シイタケを栽培している。毎日の仕事は朝8時にスタート。ビニールハウスの花の水掛けや苗の植え付け、アスパラガス畑の資材設置、除草と忙しい日々を送っている。「決められた仕事の繰り返しではないので、飽きっぽい性格の自分に合っている」と笑う。

 2年前に優花さん(23)と結婚し、優菜ちゃん(2)が生まれた。「正社員で毎月一定の給料をもらえる安心感もある。父親として、家族のためにも本気で頑張りたい」と意気込む。後藤隆英社長(66)は「高井君には生産部門を任せられる人材になってほしい。しっかりと育てたい」。

■自ら人材育成

 現在、農場ではパートも含め約20人が働き、高井さんをはじめ8人が研修生。後藤社長が研修生を初めて受け入れたのは15年以上前にさかのぼる。この数年200人を超える県内の新規就農者は、当時100人を下回っていた。町の農業委員会長も務めた後藤社長は「優秀な人材は町から出て行くばかりだった。自分で連れてくるしかないと思った」と振り返る。

 自身の法人だけでは雇える人数が限られている。研修した若者たちの独立を手助けし、経営者を増やそうと考えた。「国や県には直接、新規就農者増加への支援を訴えてきた」。最近は「農の雇用事業」「青年就農給付金」など国や県の施策も充実しているが、当初は“自前”だった。

■施策に工夫を

 指導した県内外の約50人のうち、20人以上が農家として独立、その半数以上は置賜地方で活躍している。農場に残り働き続けるケースもある。独立する場合は、新規就農者にとって難しい農地探しに協力。農場とは別に経営する花の卸売会社で、教え子たちが栽培した花を受け入れ、収入安定もサポートしている。

 「農業は山形の基盤となる産業。農業をする人がいなくなるのがどれだけ大変なことか、もっと真剣に考える必要がある」と後藤社長。農の雇用事業などの施策に関して、新規就農者増につながっていると評価しながらも「手続きを簡略化するなど、まだ工夫できる点はある。行政にはさらに新規就農者を増やす取り組みを強化してほしい」と求めた。

(「やまがた農新時代」取材班)

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