やまがた農新時代

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やまがた農新時代

第3部・スタート(10) 村山産業高で学ぶ

2014/5/28 10:00

 青柳亮一君は、村山市内でサクランボや洋ナシなどを栽培する専業の果樹農家に生まれた。今春、村山農業と東根工業の両高校が統合して誕生した村山産業高の3年生。

 小学生のころから、サクランボの雨よけテントを張る作業やリンゴの葉摘みなどを手伝った。父篤さん(50)が園地で働く姿を間近に見て育った。毎年篤さんの園地を訪れ、収穫体験をする消費者たちは「お父さんが育てたサクランボはおいしいね」と言ってくれた。篤さんが育てたサクランボは、人を笑顔にさせた。「お父さんはすごいんだ」。青柳君の心には、消費者の笑顔が鮮明に刻まれている。幼いころの体験は「父のような果樹農家になりたい」という思いを芽生えさせた。

加温ハウスでサクランボの収穫実習に取り組む青柳亮一君=村山市・村山産業高

■「父を超える」

 父も祖父も曽祖父も村山農高のOB。それ以外の進路は眼中になかった。青柳家4代目の村農生となってからの目標は、「『父のような』果樹農家」から「『父を超える』果樹農家」へと高まった。「父に追い付くには、自分が努力するしかない」「父から学ぶこともあるが、自分から学んでいかないと父は超えられない」「だから今、勉強しているんです」。青柳君は将来の目標と、それを達成するために必要な道筋を明確に定めている。

実習園地でブドウの生育状況を調べる寺崎碩人君

 県立農業大学校(新庄市)に進学し、より高度な知識と技術を身に付けたいと考えている。果樹栽培に加え、食品加工の分野にも目を向ける。これらの意欲の根源は「自分が育てた食べ物によって、お客さんが喜んでくれる」という感動にある。17歳の心を引き付けてやまない農業の魅力は、農業に従事する者にしか味わえない。

■従事者の誇り

 食物という新しい命を育て、それを食べて人が命をつないでいく―。同じ村山産業高2年寺崎碩人(ひろと)君は、植物と人間との間で交わされる「命の循環」に携わることができる農業に誇りを感じている。大石田町横山の稲作農家に育ち「小さいころから土をいじって植物が成長していく様子に触れるのが好きだった」。将来は家業を継ぐと決めている。

 「農業は大好きです」と話す。一方で、「コメ一本の経営は厳しい。兼業でやらざるを得ないと思う。本当は専業でコメを育てたいが…」。3年生になる来年には、就活が控える。自然薯(じねんじょ)の栽培を行う農業法人への就職を希望している。「これ以上、米価が下がらないでほしい」。16歳の少年が抱く夢の前に「米価」という現実が横たわる。

■将来に描く夢

 だが、立ちすくんではいない。「私が住んでいる地域でも、耕作放棄地が増えている。これを集約し規模を拡大して稲作をしてみたい」という将来展望を描く。「拡大した農地で自然薯の栽培にも取り組みたい」。10代のしなやかな思考は、大人たちがこしらえた既定の現実を軽々と跳び越えることを可能にする力を秘めている。

(「やまがた農新時代」取材班)=第3部おわり

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