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やまがた農新時代

第4部・6次産業化(2) 白鷹農産加工研究会

2014/7/21 10:54
棒状の焼き団子を中心に販売する「だんごcafe しらたか団子」。白鷹町産の野菜、加工品も扱う=山形市緑町4丁目

 農家所得の向上を目指し、担い手が生産だけでなく加工、販売までを手掛ける6次産業化。「強い農業」を実現する上で欠かせない視点として近年、国や県などが推奨する。「自分たちは6次産業化という言葉を耳にするずっと前から、そうした考えを実践してきた」。白鷹町横田尻に事務所を置く白鷹農産加工研究会の社長鈴木雄一さん(59)は淡々とこう語る。

■若者らが議論

 研究会は1981(昭和56)年、地元荒砥高の卒業生が集まり、話し合いの中から生まれた。地方の一農村で生きる20~30代の若者15人ほどが膝を突き合わせて交わした議論の結果だった。

 真っ白な雪に覆われる山形の冬、多くの農家が出稼ぎで生計を賄った。研究会発足時からのメンバーである鈴木さんは「出稼ぎをしないで農業でどう収入を得るかが、目の前の課題だった。その先に農業をどういう形で残せるか、これからも農業で食べていけるかという大きなテーマがあった」と振り返る。地域に根付いた農業を守り、地域で生きていく。当時、農薬や化学肥料を使わない有機農業が脚光を浴びていた。従来の農法でない先進的な取り組み、考え方は慣習に染まりきっていない若いメンバーを大いに刺激し、農業に懸ける思いを強くさせた。

 メンバーが在校時代に恩師に教わった大根やキュウリのしょうゆ漬けの製造、販売から着手した。設備投資をする経済的な余裕はなく、母校の調理場、地元JAの倉庫を借りてのスタートだった。加工原料の野菜は全て自前。味の良さもあって、何とか利益を生むことができた。意欲に満ちた地域の担い手たちは次なる商品開発へ向かい、みそ、餅、ジャムなどを次々と売り出した。

■株式会社化

 手掛ける商品が増えるにつれ、取引先のニーズは高まった。それに応えるため一定の設備投資を進めた。業績が伸びる中、悩みも生じた。組織内で共同体としての経営に重きを置くか、農家個人の経営を重視するかで意見が二分。前者は残り、後者は離れた。研究会は2006年、名称をそのままに株式会社化した。

 現在は役員、正社員に加え、臨時雇用を含む15人ほどで操業する。町内の農家、複数の生産法人と契約を結び、原料にこだわった加工販売、消費者に望まれる商品作りを進める。

 新たな試みとして昨年4月、山形市緑町4丁目に直営店「だんごcafe しらたか団子」をオープンした。目を引く棒状の焼き団子が売りだ。みたらし、ぬた(じんだん)などを1本100円で販売。どれも地元のこだわりの原料を使用する。店の奥に進むと、研究会の商品だけでなく、白鷹町産の新鮮野菜や加工品が並ぶ。陳列棚一つ一つの商品を通して、客に伝えたいのは食の安全、安心だ。

 専務の奥山順子さん(52)は「(農産物の)加工は先人から受け継いだ知恵。おばあちゃんが漬けた梅干し、おいしい甘酒の作り方など、お客さんに聞かれたら喜んで教える」と笑う。消費者と生産者をつなぐ手作りの店舗経営が続く。

(「やまがた農新時代」取材班)

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