やまがた農新時代

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やまがた農新時代

第4部・6次産業化(5) 食品加工・製造業者(真室川町、寒河江市)

2014/7/24 10:03
「山形チップス」など米粉にこだわった商品開発を続ける「りぞねっと」。今後はアジアなど海外に活路を求める=真室川町

 食品製造業が中心となったり、農家と連携したりする6次産業化の進展に、期待が寄せられている。2012年の工業統計では県内の食品製造業の事業所は553カ所、従業員は約1万6600人と、製造業全体に占める割合は最大。県内の製造業出荷額が07年以降、下落傾向にある中、食品製造業はほぼ横ばいで推移し、安定している。

 06年12月設立の農事組合法人「りぞねっと」(真室川町)は、自社栽培などのコメから作る米粉にこだわった加工商品開発に取り組んできた。主食用米の生産と需要が年々減少。少子高齢化が進み回復傾向が見えない中「米粉が消費拡大の突破口になるのではないか」と考えたからだった。

 主力商品の米粉麺は県内外の学校給食に導入され、昨年2月に発売した県産「はえぬき」の米粉スナック菓子「山形チップス」も人気を集めている。米粉は小麦に比べて油の吸収率が低いとされ、特に揚げ物にするとヘルシーで軽い仕上がりになる。さらにアミノ酸のバランスが良いことで知られ、アレルギーの心配もない。

 ■米粉麺の文化

県内の農家から入荷した「佐藤錦」が次々にラインを流れてくる。搾った果汁は飲料や菓子などに使われる=寒河江市・鈴木食品製造

 ただ、国内需要は期待したほど高まっていないのが現状だ。その理由を斎藤隆幸代表理事(50)は「日本ではまだ米粉麺を食べる文化が根付いていない」と分析。麺分野の低迷がそのまま需要低迷につながっている―とみる。技術革新を重ねて味と品質には自信を持つが、食の多様化が進む現在、前年比売り上げ増という目標を達成するには次の一手を考える必要があった。

 そこで活路を見いだしたのが、アジアを中心とした海外市場だ。高い技術力に裏打ちされた「メード・イン・ジャパン」ブランドは海外で抜群の信頼性があり、特に富裕層に人気がある。海外の見本市で商品を紹介すれば、高価でも売れるという。中東からの引き合いもあり、斎藤代表理事は「国内で少ないパイを奪い合っている場合ではない。価格競争は無意味。幅広く需要が見込める海外で勝負したい」と力を込めた。

 ■スイーツ開発

 果樹栽培が盛んな寒河江市。サクランボなどの生産が盛んになった戦後以降、果物缶詰加工業者が増え、今では国内トップレベルの流通量を誇る。1964(昭和39)年創業の鈴木食品製造も市の歴史とともに農産加工業を担い、地元企業と連携したスイーツ開発も手掛けている。

 同社では契約農家からサクランボ、ラ・フランス、ヨモギなどを仕入れ、年間3千トンを加工。県産材料は約7割を占め、国内各地の大手菓子、飲料メーカー、外食産業などに供給している。

 今年4月には菓子店、県、やまがた食産業クラスター協議会と連携し県産サクランボのチョコレートスイーツを開発。実の食感を残しながら乾燥させるセミドライ加工を担当した。昨年からは県内などの農家の協力を得て、ケチャップを作っている。

 ■原料のPRに

 柴田剛社長(46)は「商品を通し、県外の消費者に県産の農産物を知ってもらい、実際に原料を食べてみたいと思ってもらえることが県産品のPRになる」と強調する。6次産業化に携わり、さまざまな失敗も目にしてきた。県産農産物を使った商品をさらに増やしていく考えだが「生産者も『原材料があるから何か作って』という考えではうまくいかない」とくぎを刺す。「『こういうものを提供したい』と強い思いを持った上で、マーケットをしっかり見据えないといけない」と語った。

(「やまがた農新時代」取材班)

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