やまがた農新時代

>>山形新聞トップ >>やまがた農新時代 >>第4部・6次産業化(9) 公的機関のサポート

やまがた農新時代

第4部・6次産業化(9) 公的機関のサポート

2014/7/28 08:21
2014年度の「やまがた6次産業ビジネス・スクール」開講式。本県の6次産業化を支える人材を育成する=18日、山形市

 県内ではこれまでも、農林漁業者が生産から加工、販売までを手掛けたり、食品製造業者と連携したりする6次産業化の推進策や支援が展開されてきた。その一つに「やまがた6次産業ビジネス・スクール」による人材育成がある。

■基礎知識学ぶ

 スクールは2009年度に県、フィデア総合研究所、山形大、農業・産業団体などで組織するコンソーシアムがスタートさせた。6次産業化を目指す農業者や経営者、会社員らを対象とし、大学教授や流通業界の専門家、6次産業化の実践者が講師を務める。農産物の生産、経営の基礎知識を体系的に学ぶことができる。加工の現場の視察や販売実習も行い、実際にビジネスプランを作成する。

 受講は無料で、過去5年間で約180人が受講し、ビジネスに着手した人も多い。受講生の連携がマルシェの開催につながった例もある。本年度の開講式で、講師の野田博行山形大大学院准教授は「農作業をやりながら、どこに加工する時間があるのか―という話になるが、1人では大変でも、仲間が集まればやれる手段は出てくる。これまでのスクールでも受講生の交流からビジネスが生まれている」とエールを送った。

■生産者と共に

 6次産業化に関する相談は、県内各地の県総合支庁農業技術普及課や「やまがた6次産業化サポートセンター」(山形市)で受け付けている。サポートセンターでは、生産者からの相談はやまがた農業支援センターが、製造業者からの相談はやまがた食産業クラスター協議会が対応する。サポートセンター長の高橋武同クラスター協議会事務局長は「ラ・フランスをはじめ、加工用の需要を開拓できる農林水産物はもっとあるはずだ。生産者、製造業者と一緒に『売れる商品づくり』を考えたい」と話す。

 また、県は県農業総合研究センター(山形市)と県工業技術センター(同)にあった食品加工に関する相談窓口を一本化。食品加工支援チームを組織し、企画開発や技術開発、販売促進をサポートしている。

 6次産業化を支援する補助制度も充実している。「農林水産業創意工夫プロジェクト」は、生産者の創意工夫に富んだ取り組みに対し、事業費の3分の1以内を補助する。補助の対象となる経費の上限は個人は3千万円、団体は1億円。「食産業王国やまがた推進事業」では、食品製造業者の取り組みについて事業費の3分の1以内を助成する。補助対象経費の上限は5千万円。農産加工を行う生産者やグループを対象に、新商品開発や販路拡大に伴う製造施設整備を補助する制度もある。

 県は14年度から流通の専門家「6次産業化開拓推進員」を首都圏に3人、県内に1人配置した。マーケットの情報を本県に、また県内の加工品情報を県外の消費地に伝え、マッチングする。

■全県挙げ推進

 県は本年度を6次産業化の「実践元年」と位置付けている。今年3月に策定した「食産業王国やまがた」成長戦略(6次産業化戦略推進ビジョン)には、農林水産業の安定・発展を実現するために「オール山形」で推進すると明記した。

 若松正俊県農林水産部長は「地域活性化には産業と雇用が不可欠。企業誘致がうまくいくとは限らない中で、今ある豊かな農林水産物をフル活用しようというのが6次産業化の基本的な考えだ」と説明。そして「6次産業化は、山形らしい、山形ならではの商品を生み出して、地域の雇用増と活性化を実現するための手段。県としても引き続きしっかりと支援していく」と強調した。

(「やまがた農新時代」取材班)

[PR]
やまがた農新時代
[PR]