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第6部・環境保全型農業(4) 最上ラズベリー会

2014/11/20 15:06
「最上地域をラズベリーの一大産地にしたい」と語る最上ラズベリー会の箱山智浩会長=新庄市昭和

 もぎたてのラズベリーを食べ「甘酸っぱくておいしい」と喜ぶ子どもたち―。10月中旬、新庄市昭和で地元の昭和小児童を対象に繰り広げられた収穫体験学習での一こまだ。最上地域で栽培されるラズベリーは無農薬栽培のため、収穫した直後でも安心して口に運ぶことができる。

■国産1%未満

 「消費者の口に入るものなので、安全、安心にはこだわりたい」。新庄、金山、舟形、鮭川の4市町村のラズベリー生産者ら43人でつくる「最上ラズベリー会」の箱山智浩会長(36)=同市泉田=はそう語る。同会は最上地域をラズベリーの一大産地とすることを目指し、生産に取り組む。

収穫体験学習で、調理を前にラズベリーの軸取りを行う昭和小の児童たち=10月15日、新庄市昭和

 ラズベリーはバラ科キイチゴ属の小果樹。洋菓子の材料として人気が高く、欧米ではメジャーな作物だ。現在、国内流通品の大半はアメリカやチリ産の輸入物で、国産は1%にも満たない。輸入量は年々増えているが、品質の割に高価なため、良質な国産のニーズは高まっている。

 最上地域で栽培が始まったのは2012年と、まだまだ歴史は浅い。県最上総合支庁農業技術普及課産地研究室(新庄市)が、豪雪地でも生産可能な果樹の研究を進めたことがきっかけだった。同研究室は寒冷地での栽培に適しているラズベリーに着目。中でも実の形が良く、収量豊富な「ヒンボートップ」という品種に手応えを感じた。それを11年の果樹栽培セミナーで紹介したところ、翌12年、箱山会長ら新たな作物の可能性に引かれた13人が同会を設立し、栽培を始めた。

■県と二人三脚

 ノウハウが蓄積されていないゼロからのスタートだったが、同会と産地研究室が二人三脚で一つ一つ課題を解決。温暖で収穫適期が短い関東地方と違い、8月上旬から11月下旬まで長期間、収穫できる寒冷地であるが故のメリットもあり、出荷量は急増。12年産は約100キロにとどまったが、43人に会員が増えた13年は約1トンにまで伸び、14年産は約1.5トンを見込む。

 最上地域産は香りが豊かで、しっかりとした甘酸っぱさが特徴だ。生果と冷凍の2種類を県内や首都圏のレストラン、ホテル、青果店、菓子店に出荷し、評価は非常に高い。「品質を維持し、注文に応じられる十分な量を供給できるかが重要」と箱山会長。会を組織して生産、出荷を管理することは「安定して一定量を出荷できる利点もある」という。

 また、高い品質を維持するため、形や大きさ、着色具合に独自の厳しい選別基準を持ち、会員同士で品質を批評し合うことも。選別は最も手間の掛かる作業だが、それが付加価値を生むことにつながっている。

■ベリーの里に

 国産品の流通経路は確立されておらず、販売先の開拓は手探り状態という。箱山会長も“営業マン”として各地を飛び回り、販路拡大に努めてきた。苦労はあるが「直接、反応に接することができる。ありがたいし本当に楽しい」と話す。

 ラズベリーは収穫から出荷まで大きな力仕事がなく、女性や高齢者でも取り組みやすい果実だ。会員にも若い女性が多く、販路拡大やPR活動の際には大きな戦力となる。今後、小学生対象の収穫体験のような地元での普及活動に力を入れる考えだ。他のベリー類の栽培も始めており、箱山会長は「いつか最上地域が“ベリーの里”と呼ばれるよう、産地化とブランド化を進めたい」と夢を語る。挑戦は始まったばかりだ。

(「やまがた農新時代」取材班)

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