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やまがた農新時代

第6部・環境保全型農業(9) ナチュラルカフェ・グランロック(山形)

2014/11/26 09:52
彩りある無農薬野菜を使った各種副菜が並ぶ=山形市・ナチュラルカフェ グランロック

 木のぬくもりが詰まったレストランの中央に据えられた大きなテーブルに、高窓から柔らかな光が差し込む。日差しの先には青々とした葉物野菜にヒジキやニンジンを加えたサラダ、大根のきんぴら、モヤシとキノコの和風マリネなど彩りあるメニューと、手作りドレッシングが並ぶ。県庁に程近い山形市松波4丁目の「ナチュラルカフェ グランロック」。おいしい野菜を提供する店として定評があり、ランチを楽しむ客に野菜を使った各種副菜が好きなだけ食べられるサービスを取り入れる。

■自分を大切に

 提供する野菜は、化学肥料を一切使わない有機肥料からできた土壌の農産物に限る。同市芳野の「ユーミーズコン」が経営。代表の有路裕美さん(48)=同市篭田1丁目=が手掛ける自家菜園や借りた畑で調達するほか、市内東部の人里離れた10アールほどの土地で無農薬野菜を育てる知人から仕入れる。有路さんは「食の大切さ、さらに言えば自分を大切にする食の在り方を提示するのが、この店をオープンさせた狙い」と強調する。

 現在、店の厨房(ちゅうぼう)に立つことはない有路さんだが、20代半ばのころ、茨城県内のイタリアンレストランで修業した経験が血肉となっている。「当時、コックとして女性を雇う飲食店はほとんどなかった。茨城に遠縁がいたおかげで紹介してもらえた」と振り返る。調理師学校に通った経験がない有路さんは文字通り一から料理、接客業を学んだ。3年間の修業を通して「決して手抜きしないこと。食材にこだわり良い物だけを使うこと。この2点をたたき込まれた」。

■こだわりの店

 古里山形に戻り、28歳でカフェレストランの経営に乗り出す。ちょうど20年前。樹木や石材むき出しの店内、おしゃれなカフェの先駆けとして若者に受け、客足を伸ばした。その後、市内に居酒屋、寒河江市にレストランを相次いで出店。「料理を作っているのに、自分で食べる時間がない」。多忙を極めた結果、体調を崩し、二つの姉妹店は知り合いに引き継いだ。

 そんな中、2006年にオープンさせたのがナチュラルカフェ。安全安心な食、地産地消の店づくりにこだわる。山形の地で育った無農薬野菜をはじめ有機米などえりすぐりの食材を仕入れる。体に良い多彩な食品もそろえる。有路さんは「有機栽培のパスタだけは国内で手に入らないので、イタリア産を取り寄せている」と明かす。

■子どものため

 昼時に提供する日替わりランチなど5種類のメニューは、いずれも1500円前後(税別)。ワンコインランチなど低価格で勝負する飲食店が目立つ中、勝算はあるのか。店員は「女性客を中心に、ゆっくりと食事を楽しむ人が多い」と語る。「子どもに安全安心な物を食べさせたい」との理由で県外から足を運ぶ客もいるという。有路さんは「自分が子どものころは『外食ばかりしていては体に良くない』といった考えがあったが、それを覆したい。もっともっと安全安心な食材を使った料理を追求したい」と意欲を見せる。

(「やまがた農新時代」取材班)

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