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やまがた農新時代

第6部・環境保全型農業(10) オーガニックフェスタ(山形)

2014/11/27 09:15
有機栽培や減農薬の農産物を目当てに大勢の家族連れらでにぎわった「やまがたオーガニックフェスタ」=3日、山形市

 11月上旬の祝日。山形市の山形国際交流プラザの展示場は大勢の家族連れらでにぎわっていた。開かれていたのは「やまがたオーガニックフェスタ」。県内で有機農業に取り組む生産者の農産物や加工品が並ぶイベントだ。

■来場年々増加

 有機農業への理解を深めてもらおうと、県有機農業者協議会の若手メンバーが実行委員会を組織し、県の支援を受け2011年にスタート。今年で4回目を迎えた。県内の量販店ではあまり目にしない、有機栽培や減農薬の農産物を買えると注目を集め、来場者は初回の約2千人から年々増え、今回は約3600人に上った。

 各ブースで生産者たちが農産物の特徴やこだわりなどを熱心にアピールし、来場者も興味深く耳を傾けていた。定期購入を申し込む主婦の姿もあった。家族と訪れていた天童市内に住む保育士の女性(46)は「健康を考え、子どもたちにはできるだけ無添加の食品を与えるようにしてきた。もっと有機栽培や特別栽培の農産物が近所で手に入るようになれば」と話す。

■買いたいのに

 実行委員会が昨年のフェスタで行ったアンケートでも「有機農産物を購入したい場所」の設問に、回答者約400人のうち半数以上が「量販店・スーパーマーケット」と答えた。県内のスーパーもエコ農産物を扱うが品目、量は限られる。さらにエコ農産物を前面に打ち出したPRはほとんど行われていないのが現状だ。

 県内のスーパーの仕入れ担当者は「『食べておいしい、栄養価が高い』を最優先しており、その手段として有機農産物を仕入れることはある。ただ新たにコーナーを設けることは考えていない」と話す。「有機農産物の取り扱いは全体の数%程度」と別のスーパーの担当者。あるスーパー関係者は「有機は高いので、山形では置いてもなかなか買ってもらえない。正直、扱いにくい」と明かす。

 生産者側としても「再生産ができる、適正な価格で買ってくれる所に出したい」と考えるのは当然だろう。フェスタ実行委員長の小林温(ゆたか)さん(40)=おきたま興農舎=は「県内の有機農産物のほとんどが大消費地に出荷されている。一方で、県内でも買いたいと思っている人は多く、需要と供給のギャップは大きい」と指摘。「フェスタがギャップを埋め、生産者と消費者がつながるきっかけになれば」と期待する。

■消費者の理解

 県は「新農林水産業元気再生戦略」の重点プロジェクトに環境保全型農業の推進を掲げる。環境保全型農業のけん引役と位置付ける有機農業の取り組み拡大に向けた鍵は「技術開発による安定生産」と「消費者理解の醸成」だ。工藤郁也県農業技術環境課長は「消費者に有機農業をPRするフェスタを今後も支援していきたい。有機農産物のおいしさ、栄養分をいかに『見える化』するかもポイントになる」と強調する。

 フェスタ会場から若い男女が出てきた。山形市に住む20代の夫婦で、昨年結婚したという。「出産を意識するようになってから、有機や減農薬に関心を持つようになった。商品に納得すれば少々高くても買いたい」。2人の両手にはコメや白菜、リンゴなどが詰まったビニール袋が下がっていた。

(「やまがた農新時代」取材班)

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