やまがた農新時代

第7部・植物工場(3) 廃校の校舎を利用

2015年02月26日
空き校舎の一室を改修した「植物工場」。高級イチゴの通年栽培に取り組む=新潟県胎内市・いちごカンパニー
空き校舎の一室を改修した「植物工場」。高級イチゴの通年栽培に取り組む=新潟県胎内市・いちごカンパニー
 新潟県胎内市の山あいにひっそりとたたずむ旧校舎。校門には「鼓岡小学校」の文字が残る。子どもたちの歓声が遠のいて約2年。校舎の外観は現在も変わらないが、かつて先生たちの机が並んでいた「教務室」はイチゴの通年栽培が可能な「植物工場」に様変わりした。

■県内は50以上
 少子化の影響で学校の統廃合が進んでいる。本県に現存する小中高校の空き校舎は50以上。地域の象徴的な役割を果たした建造物の活用策が今、大きな地域課題に挙がる。

 旧鼓岡小校舎を活用した先進的な取り組みに挑むのは、いちごカンパニー(小野貴史社長)だ。小野社長が営む地元建設業者が出資し、2013年5月に設立。同年3月末、統廃合による空き校舎を有効活用するため、学生時代の三つ後輩に当たる松田祐樹副社長(41)と相談、植物工場に目を付けた。介護事業を手掛ける松田副社長は、運営施設に提供する食材を扱う農業ベンチャーを立ち上げた経験があり、そう遠くない農業分野への参入に踏み切った。

■強い香り、甘み
 「この辺りはサルが出るので畑にすれば荒らされる。そこで(発光効率が高いなどの特長を持つ)発光ダイオード(LED)を使った植物工場はできないだろうか、と考えた」(松田副社長)。工場建設や研究開発などの初期投資は、小野社長自前のノウハウを生かし一定程度に抑えた。栽培作物は、単価が低い葉物類ではなく、高単価が見込まれるイチゴを選んだ。一年を通して需要があるイチゴだが、夏場の国産流通量は極端に減るのが現状。巨大市場を見据え、廃校舎の一室から通年栽培を目指す意欲的な活動が始まった。

 「まずは食べてみてください」。事務室として使用する「保健室」に通され、テーブルに置かれた大粒のイチゴを前に松田副社長がこう切り出した。へたの際まで赤く色づいた実は香り、甘みともに強いのが特長。果実の価格を尋ねると「1個500円」との答えが返ってきた。

 品種は地元ブランド「越後姫」で一般的な栽培方法による糖度は10~11度だが、同社の技術を使うことで13~20度まで数値を伸ばすことに成功した。粒も大きく、最大で50グラム以上。大味な印象を受ける見た目だが、当の開発者は「大きいほど甘みが増す」と言い切る。

いちごカンパニーの独自技術で栽培された1個500円の高級イチゴ
いちごカンパニーの独自技術で栽培された1個500円の高級イチゴ
 イチゴを栽培する教務室の広さは約60平方メートル。4段に積まれた栽培棚が4セットで1列を成し、計5列が収まる。高さ約2・5メートルの天井近くまで緑の葉と、収穫を待つ果実が見て取れる。棚に取り付けたLEDが、生育環境に適した光を越後姫に注ぐ。実証試験を重ねた結果、快適な温度、湿度、光量を導きだし、コンピューター管理で効率良く栽培できる環境を整えた。入室は専門のスタッフに限定。閉鎖型植物工場として、病害虫の発生を防ぎ、ハチを使った受粉の仕組みを確立した。

■システム提供
 高級イチゴは昨年12月から本格的な出荷を開始した。ネット販売を中心に広がりを見せ始めている。同社の目的は高級イチゴの販売にとどまらない。確立した栽培システムを導入するパートナー探しが本来の目的だ。既に国内30社程度から申し出を受けているという。土地に根を張り、季節の循環とともに進めてきた生産活動とは一線を画す取り組み。「農業でもない、工業でもない、新しい産業の創造」。同社の会社概要はこう端的に説明している。

(「やまがた農新時代」取材班)
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