やまがた農新時代

第7部・植物工場(5) 高度施設園芸(下)

2015年02月28日
温度、湿度、日照量、CO2濃度などを管理するタブレットPCを手に、農場を案内するGRA専門研究員の菅野亘さん=宮城県山元町
温度、湿度、日照量、CO2濃度などを管理するタブレットPCを手に、農場を案内するGRA専門研究員の菅野亘さん=宮城県山元町
 宮城県南部の沿岸に位置する山元町は、東日本大震災の前、イチゴの産地として知られた町だった。しかし、この地を襲った津波は、約130軒あったイチゴ農家の9割以上に壊滅的な被害を与えた。こうした中、ICT(情報通信技術)を活用して産地の復活を目指そうという、太陽光利用型植物工場の先進的なプロジェクトが進められている。

■イチゴで復興
 プロジェクトをけん引するのは山元町の農業生産法人「GRA(ジーアールエー)」。最高経営責任者(CEO)の岩佐大輝さん(37)はもともと東京でIT企業を経営していたが、震災直後に故郷へ駆け付け、農業の復旧をボランティアで支援。イチゴの生産を再開しなければ、古里の復興はないと確信した。

 岩佐さんはIT企業を後進に譲り、知人の橋元洋平さん(37)=GRA副社長最高執行責任者(COO)=と2011年7月にGRAを設立。橋元さんの縁戚でベテランイチゴ農家の橋元忠嗣さん(66)=GRA副社長=を招き、自らイチゴ栽培を始めた。

 11年末には、農林水産省の「新食料供給基地建設のための先端技術展開事業」を受託。最先端の大規模園芸施設(広さ約1万平方メートル)を建設し、研究機関や企業と共にICTを活用したイチゴの生産、研究に着手した。

■「見える化」推進
 巨大なハウスには約2万株が整然と並び、赤く色付いたイチゴが収穫を待つ。大きさと甘さに秀でたものは「ミガキイチゴ」という名のブランド品になり、首都圏や宮城県の小売店、通販サイトで販売。最高ランクのものは都内の有名百貨店で1粒千円の高値で売られた。

 イチゴは土を使わず、培養液で栽培。ハウス内の温度、湿度、日照量、二酸化炭素(CO2)濃度などはICTで自動的に情報収集し、コントロールされる。インターネットの専用サイトにアクセスすれば、遠隔地からハウスの状況を把握し、温度などを調整することも可能だ。

 しかしICTだけではおいしいイチゴは作れない。温度や湿度などの設定値を何度、何%にするかを決めるのは人間だからだ。GRA専門研究員の菅野亘さん(38)は「多くの栽培データを収集・分析し、農家が長年の経験で判断していたことを数値化できれば、誰でもその数値に従い判断できるようになる。ここで進めているのは、ICTを活用した『見える化』なのです」と説明した。

GRAのブランドイチゴ「ミガキイチゴ」
GRAのブランドイチゴ「ミガキイチゴ」
■東北全域に拡大
 GRAは「10年で100社1万人の雇用を創造する」とのビジョンを示し、蓄えた技術とノウハウを新規就農希望者に提供するビジネスの準備を進めている。山元町を中心に、将来的には宮城県内、東北全域へと拡大したい考えだ。

 本県に太陽光利用型植物工場を建設するには、積雪と日照時間の短さなどが障害になると考えられる。岩佐さんは「光熱費を抑えながらの融雪と補光を組み合わせるなど、環境に合わせた栽培方法を研究すれば、可能性はゼロではない」と語る。

 その上で「産業が発展するには若くて優秀な人が必要。先鋭的なシステムは若者を引き付ける。投資可能な金額で農業を始められるように手伝うのがGRAの仕事だ」と話した。

(「やまがた農新時代」取材班)
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