やまがた農新時代

第7部・植物工場(7) 産学官連携

2015年03月02日
秋田県では空き工場を活用し、産学官連携で植物工場プロジェクトが進められている=秋田県にかほ市
秋田県では空き工場を活用し、産学官連携で植物工場プロジェクトが進められている=秋田県にかほ市
 秋田県にかほ市平沢に立ち並ぶ電子部品大手「TDK」の工場。その一つが植物工場として使われている。設置したのは地元企業と同県、県立大などによる産学官連携の「あきた植物工場実証コンソーシアム」。本県のシンクタンク・フィデア総合研究所(山形市)が代表を務め、収益性の高い高付加価値野菜を生産販売するビジネスモデルを検証している。2015年度からの事業化を見据える。

■組織化し始動
 実証コンソーシアムは、同研究所(事業総括・マーケティング)、横手精工(横手市、栽培実証)、TDK(エネルギーシステム技術)、秋田県の県立大学、県農業試験場、県産業技術センターで構成。県立大などは栽培・産業技術面で支援する。

 コンソーシアム設置のきっかけは、12年に浮上したTDKの拠点再編だった。にかほ市などにある複数の工場の閉鎖が決まり、協力会社の雇用の受け皿づくりが喫緊の課題になった。秋田県は横手精工と成長が期待される省エネ型植物工場設備の検証を進めていた経緯もあり、空き工場での植物工場プロジェクトを決定した。

 12年度にコンソーシアムを組織し、13年2月にTDKの空き工場を使った野菜栽培をスタート。14年度までの3カ年計画で初年度の事業費は約1億円。国が3分の2、残りは県が補助した。

■省スペース化
 工場にはエアシャワーを浴びてから入る。厳重な扉を開くと天井が高い広々とした空間にパイプハウスが3棟。1棟ではロメインレタスとサラダホウレンソウを栽培している。両脇に計20棚が並び、1棚には養液が満たされた栽培用トレー(幅約90センチ、奥行き約60センチ、高さ約13センチ)が8個セットされている。

 照明にはデジタル大型液晶テレビに使われる省電力型バックライトランプを改良したハイブリッド蛍光灯を採用している。電気代は既存の蛍光灯と比べ70%に抑えられ、発熱が少ないため、植物への近い位置からの照射が可能で、省スペースにもつながる。

 野菜の“機能”も売りだ。県立大と連携し、ホウレンソウとレタスに含まれるカリウムを露地物の3分の1から4分の1に低減させることに成功。カリウムの摂取量が制限されている腎臓病患者ら向けの需要が期待できる。

 レタスとホウレンソウの収穫量は1日平均3キロ程度で、TDKの社員食堂や秋田市のホテルに提供している。横手精工のアグリグループリーダー高橋亮悦さん(53)は「食べた人からは露地物に比べえぐみが少ないと喜んでもらっている」と味への自信を語る。

■差別化が重要
 ほかの2棟ではそれぞれイチゴと高糖度トマトの栽培に挑戦中。イチゴのハウスでは、太陽光発電装置と蓄電池、電力会社からの系統電源を組み合わせ、発光ダイオード(LED)照明に利用している。この省エネシステムはTDKによるものだ。ただ、2品目ともに安定生産を確立できておらず課題は残る。

 フィデア総合研究所の理事熊本均さん(54)は植物工場の特色として▽定規格▽定時定量生産▽購入側の欠品リスクがないこと―を挙げる。低カリウム野菜のニーズ調査を通し、ビジネスとして成り立つ手応えを感じている。一方で、近年全国で植物工場が急増している現状を受け「今後、生き残るためには、生産コストの削減、商品そのものの差別化がポイントになる」と説明する。秋田県地域産業振興課主査の山平路春さん(41)は「3年間の実証で得たノウハウを秋田県内の植物工場に関心がある方々に参考にしてもらい、参入を促したい」と秋田での植物工場ビジネスの広がりを期待する。

 東北ではほかに、青森県が「あおもり植物工場関連産業推進研究会」を組織し、関連産業の創出、植物工場運営の高収益化につながる技術の調査研究を産学官金が一体となって実施している。県によると、本県には植物工場のビジネス化を本格的に実証・研究する同様の枠組みはまだない。
(「やまがた農新時代」取材班)
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