山形再興

第1部・先端研究の求心力 山形大学xEV飯豊研究センター

2018年01月11日
リチウムイオン電池開発の拠点・山形大学xEV飯豊研究センター。ピンチをチャンスに変えるプロジェクトが進められている=飯豊町萩生
リチウムイオン電池開発の拠点・山形大学xEV飯豊研究センター。ピンチをチャンスに変えるプロジェクトが進められている=飯豊町萩生
 ピンチをチャンスに変える。口で言うのは簡単だが、そうせざるを得ない事情が飯豊町にはあった。山形大学xEV飯豊研究センターを核に、電池関連企業の集積を目指す「飯豊電池バレー構想」は、逆境をばねにして誕生した。

 転機は2012年7月11日だった。照明機器の大手メーカーが突然、飯豊町からの工場撤退を表明する。「町にとって自慢の工場だった。事前に何の説明もなく、本当に驚いた」。後藤幸平町長は当時の衝撃を鮮明に覚えている。

 工場の前身は1961(昭和36)年、町が初めて誘致した企業だった。最大200人を超える雇用の場として、半世紀以上にわたって、町の経済を支えてきた。「心のよりどころを失った。打撃は大きかった」。担当課長だった小松一芳町専門員は振り返る。

 どん底からどうはい上がるか。連日検討を重ねた結果、町は2013年3月、中小企業振興条例を制定し1企業当たり最大1億円を支援する「思い切った手を打った」(小松専門員)。

 跡地利用策は公募することにした。その中の一つに、山形大からの提案があった。リチウムイオン電池の研究開発を進める拠点施設として利用したい―。携帯電話やノートパソコン、電気自動車など世界規模で需要が見込める分野で、魅力的なプランだった。

楽しみながら最先端科学を学んでもらおうと開かれた飯豊こども研究所の「わくわくサイエンススクール」(2017年12月10日)
楽しみながら最先端科学を学んでもらおうと開かれた飯豊こども研究所の「わくわくサイエンススクール」(2017年12月10日)
 2016年1月、飯豊町萩生に山形大学xEV飯豊研究センターが完成した。総事業費15億円のうち、町は7億円を負担した。

 飯豊連峰、田園散居集落、中津川―。先人たちは素晴らしい自然・景観を守り継いできた。「日本で最も美しい村」連合にも加盟している町に、最先端科学の新たな風が吹き始めた。

 研究センターを核にしたプロジェクトが「飯豊電池バレー構想」だ。

 工場撤退後の方策を探っていたとき、視察のため町を訪れた企業関係者の一言が小松一芳町専門員の心に響いた。「以前アメリカのシリコンバレーで働いていましたが、飯豊町とよく似ている」。何もないと思っていた町が輝いて見えた。

 シリコンバレーにちなんで命名した構想は(1)施設を訪れる研究者らとの交流(2)電池関連ベンチャー企業による雇用創出(3)技術者養成などの人材育成―の3項目が柱だ。

 16年6月には、科学の楽しさを感じてもらおうと、センター内に「飯豊こども研究所」を開設した。翌7月には、次世代ロボットや産業用機械に適した電池開発を行うベンチャー企業「飯豊電池研究所」が発足した。山形銀行から出向し、構想当初から参画する長谷川貴一社長は「世界の知見が集積され、飯豊に行けば解決できる、そんな場所を目指したい」と目標を語る。

 古川正次郎町産業活性化担当課長は「本格的な成果はこれからだが、大学の施設があることで町民の期待感は高まってきている」と手応えを口にする。

 できれば誰もがピンチに陥りたくはない。だが、順風満帆は多くの場合、長くは続かない。危機に陥ったときどう立ち向かうか。「降り掛かる火の粉を逆手にとって力とすることが大事。耐えてこそ、芽が出てくる」。後藤幸平町長が思い描く未来予想図は、自然文化と最先端科学技術が融合するまち。「その輪郭がはっきり見えてきた」
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