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第2部・雪と暮らす 除雪の先進技術活用(3)

2018/2/23 09:56
除雪業者と行政が専用サイトで情報を共有。除雪費計算システムの導入は関連業務の効率化につながっている=高畠町・大浦工業

 交通機能と生活を維持するため除雪作業は寝静まったうちから進められる。昼夜を問わず稼働する除雪車はどのエリアを回り、何時間作業したのか。業者による日報作成、それをチェックし費用を計算する行政の事務処理は、かつて大きな負担となってのしかかっていた。国の「働き方改革」の流れが強まる現在、作業を効率的に済ませられる「除雪費計算システム」が双方の現場で重宝されている。

 業者が日報を作成する際、一般的には重機に備え付けたタコグラフを除雪作業後に読み取り、稼働時間や金額を記入する。提出を受けた行政の担当者は、そのタコグラフと照らし合わせ誤記載がないか確認する。早朝と日中など実施時間によって単価が異なるため、作成とチェックには細心の注意が求められる。

 こうした現場の負担を軽減するため、YCC情報システム(山形市、朝井正夫社長)は除雪費計算システムを開発した。衛星利用測位システム(GPS)による記録装置「GPSロガー」を使用し、自動的に実施内容を作成できる。除雪状況管理システムを併用すれば、リアルタイムで作業地域の把握も可能だ。

 2013年度に岩手県北上市がYCCの除雪費計算システムを導入して以降、現在では5県14市町で運用されている。本県は高畠、小国、庄内の3町で、このうち高畠町は16年度に取り入れた。手のひらサイズの記録装置「GPSロガー」を各業者に貸与。作業員は開始前にスイッチを押し、終了したら切る。これだけでGPSロガーは除雪車の稼働時間や走行ルートを記録する。そして同装置内のデータをパソコンに取り込み、専用サイトで日報を作成。町側は同サイトにログインして内容を確かめるといった仕組みだ。

 高畠町は12業者に業務を委託し、登録している計57台の除雪車全てでGPSロガーを作動させている。16年度以降、一連の事務作業に費やす時間を大きく短縮できている。書類の日報を処理するのに2時間ほどかかる業務が、今は30分程度で完了。記入やチェックミスの防止にもつながっている。

 除雪作業をいつどこで行ったかを素早く把握できるため、住民からの問い合わせにもスムーズに応じられるようになった。加えて町建設課の安達敏幸建設総務係長は「リアルタイムで予算の執行状況が分かる。追加要求するような場合も役に立つ」とメリットを強調する。

 業者側の業務も効率化した。今冬はほぼ毎日、10台を稼働させているという同町の大浦工業(大浦英樹社長)は、「以前は半日を要していた事務作業が今は1時間もかからない」。細かな集計が不要で残業時間がなくなり、町の担当者と同じサイトを見てやりとりができることから「ストレスが減った」という。

 除雪車を操縦する作業員には年配者も多い。町がこのシステムを選択したのは、スマートフォンのような機器の操作が苦手な世代でも、GPSロガーなら簡単に操ることができるからだ。時代の流れに合わせ、先進技術を取り入れて変化する除雪作業。同社の高橋一司管理部長は「事務的には簡素化したが、除雪車を運転して仕事をするのは今も昔も人。現場は変わらない」。安全に、正確に作業をして生活を守る重要性を口にする。

(「山形再興」取材班)

=第2部おわり

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