山形再興

第6部・スーパー公務員の力 (5)白鷹町・芳賀敦子さん

2018年06月29日
 「日本の紅(あか)をつくる町」。白鷹町中心部の国道287号を走ると、大きな看板が目に入る。町が生産量日本一を誇る紅花を軸に、生産者や商工会、観光協会などと連携して地域活性化を図るプロジェクトの名前だ。この協働の輪を、町商工観光課交流推進係長の芳賀敦子さん(55)=同町荒砥乙=が事務局として、パワフルに支えている。

 プロジェクトは連携推進本部(本部長・横沢浩副町長)が中心となり、「紅」をキーワードに町の特産品や文化などを発信する取り組みだ。印象的なキャッチコピーは、芳賀さんが東京の雑踏の中で思い付いた。「小さな町だけど紅花生産という『日本一』の役割がある。住民が意識し、地域に対する誇りや愛着を持ち、根付いてほしい。それが外から人を呼び込むことにもつながる」。口調は熱を帯びる。

 培った幅広い人脈を生かし、町内への移住相談窓口となる協議会の事務局としても力を発揮。2017年度は同会を通じて9人が移住を決めた。15年度の発足からゼロが続いていたが、希望者に寄り添った相談対応や周知による成果が数字に表れ始めている。

知り合いの生産者と言葉を交わす芳賀敦子さん。町民の方を向き、エネルギッシュに動き回る=白鷹町広野
知り合いの生産者と言葉を交わす芳賀敦子さん。町民の方を向き、エネルギッシュに動き回る=白鷹町広野
 白鷹町職員の芳賀敦子さん(55)がこれまで担当した分野は消防団やダンベル体操推進、農村公園整備、税務など多岐にわたる。1992年に県内で開催されたべにばな国体にも携わった。「大それたことはしていない。自分より大変な仕事をしている職員はたくさんいる」と強調した上で、「できる限り町民の不安を取り除きたいと職務に励んできた」という。住民との対話や現場感覚を大事にし、培った人脈はどの部署でも支えになっている。

 苦労もあった。公園整備に伴う用地交渉では「なして、おなご(女性)が来るんだ」と住民からつれない言葉を浴びたり、家に上がらせてもらえなかったりした。家族の夕飯を用意した後、相手の都合に合わせて夜遅くに訪問したこともある。時には共通する趣味の話題を突破口に粘り強く交渉を続け、相手の信頼を得た。

 現在担当する「日本の紅(あか)をつくる町」プロジェクトは、紅花生産量日本一を維持し、農産物や文化を「紅」でくくりPRするのが狙い。2015年に中心となる連携推進本部が発足し、生産振興や若手農家による6次産業化の支援、町内施設での「紅」を基調とした料理の提供などが進んでいる。

 芳賀さんはこうした動きを陰で支えるとともに、町職員の紅花にちなんだポロシャツ着用、町のオリジナルソングやダンスの制作といったアイデアあふれる活動をお膳立てし、積極的に関わってきた。

 現在、一番の課題としているのは紅花の収量増に向けた摘み手の確保だ。作業は機械化できず、適期は気候に左右されるため農家の負担が大きい。生産者やJA山形おきたまなどと検討を重ねており「少しずつ具体的なアイデアが出てきた。『みんなで考えよう』という雰囲気がうれしい」と笑う。

 もう一つの担当である町内への移住促進。相談窓口となる協議会事務局として、ニーズに沿った紹介ができるようにと、仙台市や首都圏での相談会には町内の不動産業者や農業関係者と共に臨む。下見に来町する人には希望職種の関係者や似た生活スタイルの住民を紹介してきた。1月に都内で開かれた合同相談会では、全国の市町村がブースを構える中、春から町地域おこし協力隊員となった三浦康さん(36)に声を掛け、これが就任のきっかけとなった。

 首都圏から移住した田勢秀康さん(68)は芳賀さんをこう評する。「住民同士で話をすると、名前がぽんと出てくる。それほど町民の方を向いているということ。ネットワークが広いから情報が入り、反応のアンテナも多く立っている。物事を変に忖度(そんたく)せず、地域の悩みや困り事の核心を突いて解決に動く人だ」

 役場を離れてもエネルギッシュだ。福祉施設を慰問する町職員らの歌謡愛好グループで代表を務め、プライベートではフラダンスを愛好し米国カーネギーホールで踊った経験もある。

 「頭の中は多くのことが同時進行している」という芳賀さん。若手職員には「眠る時間も含めて毎日、町のことを考えてほしい」と願う。「一人では何もできない。『やってよかった』と思えることを皆でやりたい」。7月は紅花関連のイベントが多く、週末は特に忙しい。最近誕生した初孫に会う機会は限られそうだが、きょうも地域のために奔走する。
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