2011年03月18日
肉牛など家畜の発育に深刻な影響を与える飼料不足=川西町・玉庭放牧場
東日本大震災で発生した津波により、宮城県石巻市など太平洋側にある家畜用飼料の工場が壊滅的な被害を受けた影響で、県内の畜産農家が危機的な状況に追い込まれている。牛や豚などに与える餌が底を突き、家畜が餓死する恐れが生じている農家も。農協系の飼料については、今週末に急きょ、酒田港を通して入荷できる見通しとなったが、荷揚げした飼料を各農家に届ける運搬車両の燃料の問題もあり、農家の不安は消えない。
JA全農山形によると、これまで東北の農協系統の家畜飼料は、JAグループの北日本くみあい飼料(仙台市)がほぼ一手に引き受けており、本県を含む南東北については、石巻工場が製造拠点となっていた。
大震災でその石巻工場が被災、一切の供給機能を失った。県内で同社から供給を受けていた多くの畜産農家は、地震直後からストックしている飼料を細く長く使い、新たな飼料が到着するのを待っているが、限界に近付きつつあるという。
肥育牛約2500頭を飼育している「スカイファームおざき」(尾花沢市)では、与える餌の量を減らし、今ある在庫分で何とかしのいでいるが、「このままでは1日の餌を20%程度に減らさなければいけなくなる」と危機感を強める。20日に補給される予定だというが、どの程度確保できるかは分からず、一日も早い供給を求める。
独自の牧場と販売ルートを持つ高橋畜産食肉(山形市)も状況は同じ。取引のあった配合飼料メーカーが軒並み被災し供給がストップしたため、在庫はあと数日分だけだという。「餌の量を減らしているが、このところの寒さで牛の体力も落ちている。肉の品質は心配だが、まずは牛たちの命を守らなければ」と不安そうに話す。
米沢牛の産地でも、影響は大きい。JA山形おきたま畜産酪農課によると、同農協が生産農家らに納入している家畜飼料の8割以上が、大震災で壊滅的被害を受けた北日本くみあい飼料石巻工場からのものだといい、大震災発生後、飼料不足に陥っている。現在は、各農家の備蓄で食いつないでいる状態だ。
必要な種類の飼料が手に入らないと肉質を高めるための飼料配合ができなくなり、長期化すれば高級牛ブランドの品質にも影響しかねない。同課は「家畜の生命にも影響する可能性がある。家畜飼料の配送車両にも優先的に燃料を回してほしい」と訴える。
米沢牛振興部会長で、自身も肉牛115頭余りを所有する川西町西大塚の大沼藤一さん(55)は「酒田港から届く配合飼料は普段の3分の1程度の量。このままでは牛が十分に育たない」。現在は、わらを多めに与えてしのいでいるが「継続して飼料を仕入れられる見通しが立たない」という。「牛を育てて30年以上になるが、こんなに餌が手に入らないのは初めて」とため息交じりだった。
食肉生産・販売の平田牧場(酒田市)では、今は別業者などから新潟ルートで供給を受けている状況。通常であれば1日当たり約200トンの飼料を用いて豚を飼育しているというが、「全然足りない。困った状態だ」と新田嘉七社長。「飼料の安定供給のめどがたたない状況では、食べさせる量を減らさないと対応できない」と語った。