東日本大震災

遺体収容まで5日「やっと供養できる」 宮城・南三陸町で庄内町が炊き出し

2011年03月19日
海岸から3キロほど離れた山間まで津波が押し寄せ、集落をまるごとのみ込んだ。正面の樹木が生い茂る山の向こうに海がある=18日午前7時14分、宮城県南三陸町
海岸から3キロほど離れた山間まで津波が押し寄せ、集落をまるごとのみ込んだ。正面の樹木が生い茂る山の向こうに海がある=18日午前7時14分、宮城県南三陸町
 復興を見届けるまで自分たちも頑張る-。東日本大震災で壊滅的な打撃を受けた宮城県南三陸町に18日、友好町・庄内町から町長ら約30人が支援物資の搬送と炊き出しのため駆け付けた。同じ施設内の遺体安置所では、身内と対面した遺族が「寒かったろう」「やっと供養してやれる」と天を仰いだ。くじけない。負けない。あきらめない。被災者は人々の温かい心を受け止めながら、懸命に前を向こうとしている。
(仙台支社・松田直樹、報道部・色摩高幸)

 国道398号を海岸線へ向かう。南三陸町に入ってしばらくすると、両脇に残骸が見えてきた。海から約3キロ。山に囲まれた静かな集落。海は見えない。ここまで津波が押し寄せると、誰が想像しただろうか。

 海沿いの美しい町並みは廃虚と化していた。町役場は窓も壁も剥ぎ取られ、鉄骨だけの無残な姿をさらしている。庄内町が炊き出しをする場所、対策本部のあるベイサイドアリーナに向かう途中、がれきを集めて暖を取る夫婦がいた。妻(63)は間一髪で命をつないだという。

 地震で家に被害がないことを確認し、ほっとした時。津波が迫ってきた。慌てて2階に上ったが、海水が家屋を満たし、体が持ち上げられた。「このまま死ぬんだ」と思ったが、間もなく水が引いた。

 夫(68)の姉(69)は発生から2日後の13日、がれきの山の下から遺体で発見された。救い出そうとしたが、人の力だけでは不可能だった。対策本部に頼んだが、「順番だから…」。

庄内町から約30人が駆けつけ、被災者に「つゆ餅」を振る舞った。「温かい食べ物は地震後初めて」と好評だった=18日午後0時14分、宮城県南三陸町・ベイサイドアリーナ
庄内町から約30人が駆けつけ、被災者に「つゆ餅」を振る舞った。「温かい食べ物は地震後初めて」と好評だった=18日午後0時14分、宮城県南三陸町・ベイサイドアリーナ
 午前11時すぎ、ベイサイドアリーナ前で庄内町の炊き出しが始まった。この施設には約1500人が避難している。用意したのは豚汁に餅を入れた「つゆ餅」2000人分。「何か役に立ちたいと、みんな思っていた」と町商工会の阿部武敏会長。原田真樹町長は「長い戦いになると思うが、南三陸町の復興を見届けるまで全力で支援し続けたい」と話す。パッケージに「復興の願い込めた」と印刷された大根漬けも配った。

 施設内で取材中、先ほど話を聞いた夫婦と再会した。「ようやく姉を運んでもらいました」。夫が安堵(あんど)した表情を見せる。厳しい冷え込みが続く中、姉の娘(38)は、母を発見した13日、顔の泥を拭いた上で、新しい毛布を掛けてあげた。5日後の18日、その毛布には雪が降り積もっていた。「寒かったろうに…。でも、これでようやく供養してあげられる。今日は人生で一番いい日です」。夫は目に涙をためて、笑った。
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