2011年03月21日
運転を再開したJR奥羽本線下りの始発列車。朝早い出発で、仮眠をとる乗客も目立った=20日午前6時49分
「動いてくれて本当に良かった」。乗客はみな笑顔だった。東日本大震災発生から10日目の20日、JR奥羽本線米沢-山形間が運転を再開した。上下各13本の臨時運行だが、人々の移動の大きな支えだ。午前6時6分米沢発の“始発列車”に同乗した。(米沢支社・三浦光晴)
まだ薄暗い午前5時50分。米沢駅の2番ホームに明かりをともした2両編成が止まっている。車内には10人前後が乗っていた。山形市小荷駄町、シルバー人材センター会員土田保吉さん(68)は米沢市の義父宅から帰れずにいた。「週明けから通勤する人もひと安心だろう」。米沢市通町4丁目、短大生出川夏子さん(19)は秋田県に帰省する。「地震でタイミングを逃して。やっと帰れる」と笑みをこぼす。事情は異なってもほっとした気持ちは同じ。列車は定刻通りに出発した。
住宅地を抜け、霧でかすむ田園の中へ。東の空が赤く染まっている。同6時15分、高畠駅に到着。職員が線路に下り、スコップで除雪に当たった。出発が10分ほど遅れる。
同駅を過ぎると、車内には高校生の姿が目立ち始めた。野球部員だろうか、丸刈りの男子生徒は腰を下ろすとすぐに居眠りを始めた。女子生徒たちは買い物の話題で盛り上がっている。車内の光景は「震災前」と変わらない。
奥羽本線米沢―山形間の運転が再開され、山形駅の改札を出る始発列車の乗客たち。9日ぶり駅の往来が戻った=20日午前7時3分、山形市
午前6時51分、茂吉記念館前で乗車した山形商業高1年山口詩織さん(16)は部活に向かう足がなかったという。「車で送ってもらっていたけどガソリンはもう無い。電車が動いて良かった」と口元を緩める。燃料不足解消の見通しが立たない中、鉄道の運転再開は心強い。
外はすっかり明るくなっている。同7時ごろ、列車は山形駅のホームに滑り込んだ。約40人の乗客が足早に改札口へと向かうと、ホームからは人の姿がなくなった。山形新幹線のホームに目をやると、運転席の窓に雪を載せたまま「つばさ」が止まっている。3連休の真ん中、日曜日の駅ににぎわいはない。それでも、「震災後」の生活に向けた一歩は踏み出した。